日本フルードパワーシステム学会誌は，学会創設30周年の節目に，ホームページ上での電子出版緑陰特集号を出版する運びとなった．昨年度は，学会誌の電子出版の準備段階として，通常の印刷形態の緑陰特集号を電子ファイル化し，ホームページから参照できるようになっているが，ホームページに特化した本来の意味での電子出版号は，今回が初めての試みである．以下で，学会誌電子出版の経緯と，本電子出版号の特徴について述べる．

編集委員会では，会誌検討ワーキンググループを結成し，よりよい学会誌を目指して，これまで検討を続けてきた．平成14年7月には，会誌改革サブグループを設けて，将来の学会誌の電子化など，より長期的な検討を行ってきた．また，理事会でも平成14年度に小波論文集委員長を中心に，電子ジャーナル化に向けた検討を行い，学会として論文集も含めた出版物の電子化に関する長期的な取組みに関する見通しを策定している．学会誌の緑陰特集号の電子化は，このような長期計画の中での，試金石と捉えることができ，編集委員会では平成14年度の雑誌体の記事をpdf形式でホームページ上に掲載したのに続き，平成15年度は，ホームページからのアクセスに特化した本来の意味での電子出版の形態で発行することとした．

電子出版緑陰特集号の基本的な考え方を以下に述べる．

1) 電子出版誌の構成

インターネットの特性を生かした構成とする．記事ごとにファイルを分割して高速なアクセスを実現するとともに，コンピュータ上で見やすいよう１段組とする，可能な限り，HTML形式とpdf形式の両方のファイルを提供するようにしている．コンピュータ画面上での表示に便利なHTML形式の記事では，文章と図面を別画面とするなどの工夫を行っている．また，印刷用のpdf形式では，印刷形式の学会誌と同等の印刷結果が得られるようにした．また，会告などにおいては，リンクを用いて必要な情報が効率的に得られるように工夫している．

2) 記事の扱い

印刷形式の記事と同等の著作物として扱うことを基本とする．検討の過程で，インターネットの柔軟性を生かして，記事内容を，随時最新情報に更新するような形態も検討したが，著作物としての普遍性を重視する立場をとることとした．したがって，記事の査読については通常の印刷形式の学会誌と同一のプロセスを経ている．ただし，印刷の手間がない分，最新の情報が記事に反映されている．たとえば，本緑陰特集号の小特集｢産業に役立つフルードパワーシーズ｣は，本年４月末に行ったアンケート結果に基づき構成されたものである．

3) 巻号，頁の取扱い

電子出版号は，毎年７冊発行される学会誌の中の１号としての位置付けではあるものの，出版形態が異なることから，巻（Vol.）は同一であるが，号(No.)とページは印刷形式とは独立としEを付して表すこととした．電子出版号の文献の参照は，例えば以下のように記載するものとする．

(例)

早瀬敏幸：学会誌緑陰特集号の電子出版について，フルードパワーシステム，34巻E1号，2003, pp. E2/E3

4) 会員外への公開

ホームページ上で公開することから，会員外への公開の是非について検討した．1年分の学会誌７冊中の１冊分のみであることから，当面はパスワード等による制限は設けず，広く情報を公開して，学会員へのサービスのみならず，会員外へも広く情報発信し，フルードパワーシステムの啓蒙，新会員勧誘に資することとした．

学会誌の電子出版については，編集委員会，学会事務局の間で多くの議論を重ねて実施したものであるが，初めての試みでもあり，不備な点も含まれているのではないかと危惧している．本緑陰特集号をお読みいただき，ご意見，ご要望等を，ぜひ編集委員会までお知らせいただきたい．今後の電子出版に生かしていきたいと考えている．

最後に，本特集号は編集委員会ワーキンググループの藤田壽憲，吉田和弘，早瀬敏幸の3委員によって企画，構成された．ホームページへの掲載にあたっては，情報ネット管理・運営委員会のご協力をいただいたことを記し謝意を表する．

著者紹介

はやせとしゆき

早瀬敏幸君

1956年1月30日生まれ．

1980年名古屋大学大学院博士課程前期課程修了．同年名古屋大学工学部助手．1990年東北大学流体科学研究所助教授，2000年同教授，現在に至る．生体流動，流体情報，流体制御の研究に従事．日本フルードパワーシステム学会，日本機械学会，計測自動制御学会などの会員．工学博士．

email:hayase@ifs.tohoku.ac.jp

URL: http://reynolds.ifs.tohoku.ac.jp