資 料
機械系技術者のシステムモデリングと制御系モデリングとの接合*
中田毅**
* 平成24年6月4日原稿受付
** 東京電機大学情報環境学部,〒270-1382印西市武西学園台2-1200
1.研究委員会の概要
フルードパワーシステムの設計には従来の実験的手法に加えて,シミュレーションによる動特性解析手法が広く取り入れられるようになり,システム設計の最適化,設計時間の短縮,開発工数の削減に大きな役割を果たすようになってきた.比較的簡易に利用可能なシミュレーションソフトウエアにおけるシステムモデル構築に際し,制御工学で利用されているブロック線図に基礎を置くMATLAB/Simulinkが広く利用される一方,本学会を基盤として開発されたボンドグラフに基礎を置くOHC-Simも一部で使用されている.この両者の図的表現の概念の違いにより,制御系技術者と機械系技術者のシステムモデル構築に対する意識の違いを生み出している.したがって,この両者の相互理解はシステムの最適設計や最適制御法を構築する上できわめて重要であるとの認識の下,本研究委員会は,機械系技術者のシステムモデリングと制御系技術者のモデリングとの接合を目指して,機械系,制御系の双方向の理解が容易に進められるようなモデル化手法,モデル交換法などの確立を目的としている. 第1期研究委員会を平成23年6月〜24年5月に実施し,現在その第2期として平成25年5月まで1年間の研究委員会の延長を行っている.現在の研究委員会委員構成は,企業側委員10名,大学側委員5名である.
2.研究委員会の実施概要
第1期研究委員会では,モデル化手法の基本的な視点と数学モデルの解法(数式処理法)の現状について委員相互の知識の共有に重点を置くこととした.具体的には,ボンドグラフとブロック線図の基本的な考え方に関する意見交換と問題点の抽出を行った後,外部の専門家をお招きし,車輌のモデル化によく利用されているオブジェクト指向のマルチドメイン・モデリング言語「Modelica」と,これを採用した各種数式処理ソフトの紹介,数式・数値解析ハイブリッドシミュレータの概要などについてご講演を頂き,活発な討論が行われた.第2期研究委員会では,得られた成果を活用しつつ,機械系技術者のシステムモデリングと制御系モデリングとの接合を目指して,ボンドグラフとブロック線図との連結を念頭に,(1)機器要素のモデル構築のための基礎概念の確立,(2)モデリング手法の整理,(3)モデルの構築法の共通化,モデル交換の容易化,に関する検討を行う予定である.
おわりにあたり,本研究委員会の趣旨に興味をお持ちの方々の委員としてのご参加,あるいはオブザーバとしてのご参加により,さらに活発な研究委員会となることを期待している.
著者紹介
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中田毅君 東京工業大学精密工学研究所,工業技術院機械技術研究所を経て, 1993年東京電機大学工学部精密機械工学科教授. 現在,同大学情報環境学部情報環境学科特任教授. 機能性アクチュエータ,液体流量計測法などの研究開発に従事. E-mail:nakada@sie.dendai.ac.jp
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