資 料

 

編集委員会の活動報告*

 

吉田 和弘**

 

*平成2671原稿受付

** 東京工業大学 精密工学研究所,〒226-8503 横浜市緑区長津田町4259-R2-42

 


1.はじめに

(一社)日本フルードパワーシステム学会では,学会誌「フルードパワーシステム」を電子出版号を含めて毎年7号刊行すること(本学会細則第13条),学会誌には,展望・解説・資料および本会の事業や会務に関する諸報告,そのほか適当と認める記事を掲載すること(本学会細則第14条)が定められている.編集委員会は,正会員の大学関係者および正会員または賛助会員の企業関係者を中心に構成され,学会誌の編集および出版に関する検討を行っている.

学会誌は,フルードパワーの現在および将来に関係する世界の最先端技術および国際規格の総合的な情報,フルードパワー機器および関連学問分野に関する初心者にも理解できる解説,大学研究室および企業の紹介,さまざまな経験を持つ方々による興味深い随想,海外滞在経験者による各国の社会事情の紹介,学会活動の最新情報など,多岐にわたる情報を掲載している.これをフルードパワー関連の研究者,メーカ,またはユーザである会員諸氏に提供し貢献するとともに,データベースとして活用いただいている.さらに,学会ホームページに掲載された電子出版号を始めとするWeb情報および図書館に置かれた冊子体を通じて,会員以外の方々への学会の広報活動を行っている.

2.平成25年の活動

平成25年には,学会誌充実の一歩として新たなフォーマットを採用し,第44巻第1号〜第6号,および電子出版緑陰特集号第44巻第E1号を発行した.各号は,数件の記事からなる特集と,そのほかの多様な記事により構成した.特集以外の記事としては,学会の会長および副会長の年頭挨拶,学会関連行事のニュース,会議報告,連載形式の教室(おもしろ油圧機構,おもしろ空気圧,入門講座「流体力学」),駐在員日記,国際標準化(連載),特許(連載),随想,研究室紹介,および学会企画行事の報告記事などである.以下では,各号の特集の概要について紹介する.

 

44巻第1号 特集「ものづくり教育(大学編)」

日本の製造業に重要な「ものづくり」のため,大学で行われている機械系ものづくり教育のユニークな試みを特集している.ものづくりをチームで実行するために必要なエンジニアリングファシリテーション,エンジニアリングデザイン教育事例,日本技術者教育認定機構(JABEE),米国カーネギーメロン大学の教育事例,国際デザインコンテスト(IDCロボコン),PBLProblem (Project)-based learning),ものづくりを主体としたプロジェクト研修を行う教育事例,および金型基礎教育プログラム事例が紹介されている.

 

44巻第2号 特集「自動車技術とフルードパワー」

企画委員会との合同企画として,自動車の動力伝達系,懸架装置系などにおいて操舵性能,制動性能に深く関わるフルードパワー技術について特集している.油圧制御の自動変速機,トルクコンバータ内の油圧解析技術,エンジンの動弁系機構の油圧制御,サスペンション技術,回生協調ブレーキシステム,電動油圧式電子制御パワーステアリング用オイルポンプ,およびACサーボモータ駆動ポンプ制御電動油圧パワーステアリングが紹介されている.本号は平成25529日開催の平成25年春季講演会併設セミナー「自動車技術とフルードパワー」のテキストとしても活用されている.

44巻第3号 特集「ものづくり教育(企業編)」

44巻第1号で取り上げたものづくり教育について,企業のユニークな取り組みを特集している.企業における技術を適切に引き継ぎ進化させることができる人材教育の重要性,技術者として力学を感覚的に理解することの重要性が指摘されるとともに,本学会の空気圧システムの産学連携出前授業,企業を支援しているポリテクセンター関西の活動, 重工業,油圧機械部門における人財育成の諸活動の事例,機械・自動車部品メーカにおける技能者教育事例,および大田区次世代モノづくり人材育成事業の構想が紹介されている.

 

44巻第4号 特集「ADS−新水圧技術の今!」

本学会の「水圧システム研究委員会」の活動をベースに,水圧駆動システムADSAqua Drive System)の最新の技術動向について特集している.ADSの実用化圧力領域(低圧,中圧,高圧)ごとの技術開発と市場に関する展望,中圧域における高速水圧ポンプの特性,水圧シリンダの開発と応用,水圧電磁比例制御弁/水圧サーボ弁の開発と応用,水用高圧汎用バルブの開発,および水圧機器用シールに関する最新の技術動向が紹介されている.

 

44巻 第E1号 電子出版緑陰特集号

まず,フルードパワー技術に関する展望として,平成24年度の学会誌,油圧分野,空気圧分野,水圧分野,および機能性流体分野の動向が紹介されている.つぎに,小特集「日本フルードパワーシステム学会賞受賞者および研究委員会の紹介」として,学術論文賞受賞者,技術開発賞受賞者,SMC高田賞受賞者,および油空圧機器技術振興財団学術論文顕彰受賞者による技術解説4編,技術功労賞受賞者および学術貢献賞受賞者による随想3編が掲載されている.また本学会の五つの研究委員会および特別研修会の活動が紹介されている.

 

44巻第5号 特集「流体が関連して発生する騒音・振動」

工学的に関心が高く,また環境問題,安全・安心,信頼性などの観点から工業的にも重要な流体関連騒音・振動について特集している.CFD(数値流体力学)による流体騒音の予測手法,流体構造連成解析手法,空力自励音とその数値解析,超音波ジェット騒音とその低減化手法,水しぶきの形成と音の発生,音響構造連成解析による音響場の直接計算手法,逆止弁自励振動の流体構造連成解析,水撃作用の固液連成力学が紹介されている.

 

44巻第6号 特集「人間の歩行・立位を支援するフルードパワーシステム」

医師,臨床検査技師,介護福祉士,理学療法士などが医療・検査・介護・介助・リハビリテーションなどで問題解決を図っている人間の歩行・立位の支援に対し,工学分野からの貢献の参考となる特集が組まれている.ヒトの立位姿勢・歩行運動を支える神経システムについて解説されるとともに,歩行の計測・評価の新技術,水圧人工筋を用いた歩行訓練補助装具,空気圧制御による歩行支援装具,小形MR流体ブレーキ膝継手を用いた随意制御大腿義足,立位保持装置が紹介されている.

3.おわりに

編集委員会では,会員に情報を提供するとともに学会の広報活動にも役立つ,内容が充実し読みたくなる会誌の実現を目指して,今後も努力してまいりますので,よろしくお願いいたします.学会誌へのご意見,ご要望をお待ちしております.

著者紹介

よしだ  かずひろ

吉田 和弘君

1989年東京工業大学大学院博士課程修了,同年同大学助手,1996年同大学助教授(現,准教授).200810月〜20093月米国UCSB客員研究員.流体マイクロマシン,機能性流体の研究に従事.JFPSJSMEIEEEなどの会員.工学博士.

E-mail: yoshida@pi.titech.ac.jp