資 料
フルードパワーのトライボロジー研究委員会(W)*
西海 孝夫**
* 平成27年5月5日原稿受付
** 防衛大学校機械システム工学科,〒239-8686 横須賀市走水1-10-20
トライボロジーとは,「相対運動をしながら互いに干渉し合う二つの表面およびそれに関連した諸問題とその実地応用に関する科学技術」と定義され,フルードパワーのトライボロジー(潤滑,摩擦,材料摩耗,シール,作動油など)は,機器固有の特性を大きく左右する重要な学問領域といえる.フルードパワーに関するトライボロジーの研究委員会は,1961年に日本機械学会によって油圧および油圧機器調査分科会の一つとして国内で初めて設けられた.その後,本学会(JFPS)でも1988年に油空圧に関するトライボロジー研究委員会が設立され,数度の委員会設置や期間延長を経ながら,多くの研究者・技術者にとって有意義な意見交換の場を提供してきた1).
本研究委員会(委員長:小曽戸博[平成26年5月まで],西海孝夫[平成26年5月より],幹事:置塩直史,一柳隆義,全委員:25名)は,過去の委員会(T),(U),(V)の趣旨2)を継承し,平成25年度より2年間で委員会を5度開催し,フルードパワーシステム(JFPS)講演会でオーガナイズドセッション(OS)を1回企画した.活動状況は下記のとおりである.
l 第1回(平成25年6月13日,機械振興会館):「油圧技術・気泡除去技術」鈴木隆司委員,「省エネルギー型油圧作動油の適用事例」置塩直史委員
l 第2回(平成25年12月6日,JXビル):「作動油種による摩耗特性の違いと油圧ポンプ・モータでの耐摩耗対策について」後藤正宏委員,「油圧駆動アシスト装置の大型トラック応用例と実績」廣瀬洋二氏
l 第3回(平成26年5月23日,機械振興会館):「油圧ピストンモータの運転条件となじみ性について」稲田哲也委員,IFK 国際フルードパワー会議2014とCONEXPO-CON/AGG 2014 国際建設機器見本市の参加報告」小曽戸博委員
l 第4回(平成26年12月17日,JXビル):「低騒音・低脈動を特徴とする外接式はすば歯車ポンプの設計紹介」細川哲朗氏,「油圧機器のメンテナンス技術」加藤克紀氏
l 第5回(平成27年3月12日,JXビル) :「急拡大および急縮小断面を有する油圧管路の脈動伝達特性について」一柳隆義委員, 「油圧作動油用粘度指数向上剤とポンプ効率に与える影響」内藤康司氏
l JFPS講演会OS(平成26年5月30日,機械振興会館):「斜板式アキシアルピストンポンプ・モータのスリッパモデルの数値シミュレーション(リテーナの影響)」風間俊治委員,「油圧シリンダ挙動のシミュレーション精度に及ぼす摩擦モデルの影響」柳田秀記先生,「油圧作動油の省エネルギー効果の評価方法(第3報) −異なる粘度の作動油への適用−」大塚正和委員
油圧機器の性能向上を図るためには,トライボロジー技術は欠かすことができない研究分野である.今年度よりスタートの研究委員会では,過去のトライボロジー研究委員会の流れを組み入れつつ,とくに油圧機器や油圧作動油関連に特化し深く掘り下げた内容を議論する場としたい.一方,油圧機器(ポンプ,バルブ,アクチュエータなど)には,たとえば圧力脈動やキャビテーションの問題など低騒音・低振動化への課題が多く残されている現況にある.以上を鑑み,「油圧機器のトライボロジーなど基盤技術に関する研究委員会」と名称を改め,油圧関連企業の若手技術者の相互交流を盛り上げ,トライボロジーなど油圧基盤技術の伝承を目的に活動予定である.本研究委員会にご興味のある方は筆者または事務局までご連絡いただければ幸いである.
1) 風間:フルードパワーのトライボロジー研究委員会:経緯と展望, フルードパワーシステム, Vol.36, No.1, p.52-53(2005)
2) 小曽戸:フルードパワーのトライボロジー研究委員会(V), フルードパワーシステム, Vol.44, No.E1, p. E55-E56 (2013)
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