資 料
自動車の動力伝達・制御に関わるフルードパワー技術研究委員会*
佐藤 恭一**
* 平成27年6月17日原稿受付
** 横浜国立大学大学院工学研究院,〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5
自動車では,変速制御,クラッチ制御,ポンプ,潤滑,ブレーキ,ステアリングなど,動力伝達や制御を担う多くの部分にフルードパワー技術(油圧技術,空気圧技術)が活用されている.そのなかで,従来からの成熟した技術の洗練と,さらなる高効率化,高性能化に向けての新技術開発が,自動車メーカー各社で個別に進められている.また,フルードパワーと電動との融合,電動技術とのすみ分け,電動化への移行など,フルードパワー以外の技術にも広く目を向けて知見を集約し,今後の自動車におけるフルードパワー技術の展望を検討する必要が生じている.そこで,当研究委員会では,自動車におけるフルードパワー技術の現状および業界共通の技術課題を整理し,将来のフルードパワー技術の展望を明確化することを目的に発足した.委員長は横浜国立大学 佐藤恭一,幹事は機械振興協会 五嶋裕之が担当し,委員は約20名で6割が企業所属の委員,4割が大学等,中立研究機関の委員である.特徴として,委員の多くは自動車メーカー,自動車部品メーカーに所属するが,委員を自動車関連企業に限定せず,自動車のフルードパワーに関心を持つ技術者,研究者にも多く参加してもらうことにより,多角的な技術議論ができる委員構成としている.
当研究委員会では,これまで下記の話題を取り上げて技術議論を行った.
(1) 「新型無段変速機用高効率油圧システムの開発」,(2)「自動変速機(AT,CVT,DCT)と流体制御」,(3)「回生協調ブレーキ」,(4)「アキュムレータを用いたエンジン再起動によるアイドリングストップ方式油圧源」,(5)「パワーステアリングの変遷と動向」,(6)「1.5LクラスFF車用CVTの開発」,(7)「トラック用AMTの空圧・電動アクチュエータに関して」,(8) 「トロイダルCVT に関する油圧技術」,(9) 「自動車用変速機油の動向」,(10) 「流体管路動特性のモデリングと流体計測技術への展開について」(燃料噴射装置関連),(11) 「自動変速機の動向と技術」など.自動車動力伝達系の高効率化のための変速機構用油圧源および油圧制御技術と,ブレーキ,ステアリングなどの車両運動制御に関わるフルードパワー技術に大別される.
平成27年3月に当初予定していた設置期間の満了時期となったが,現在もなお自動車に関わるフルードパワー技術の調査と技術議論が非常に活発に行われており,これらの議論をさらに発展させ,また,現時点で調査に至っていないその他の自動車関連フルードパワー技術を議題に取り上げて,より充実した調査研究成果を上げるために,さらに1年間(平成28年3月末まで)の期間延長を行い,活動を進めている.
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