資 料

 

アクアドライブシステムの省エネルギー技術開発研究委員会*

 

鈴木 健児**

 

* 平成2766日原稿受付

** 神奈川大学,〒221-8686 神奈川県横浜市神奈川区六角橋3-27-1

 

 

1.はじめに

「アクアドライブシステム」という名称も一般に受け入れられつつあり,その有用性が認識された水圧システムであるが,油空圧とは異なる市場意識が不可欠であり,それゆえ技術開発においては広い業界横断型の情報交換が必要となる.一方,水圧システム構成機器の省エネルギー化のための開発課題が山積している.さらにシステム技術からも,制御と省エネルギーをキーワードとして,新たな課題が見えている.

本研究委員会では,今後広い応用が期待されている低圧・中圧域を中心に,1) 摩擦や内部漏れによる損失低減化技術,2) 機器および構成要素の効率向上および小型化,3) システムレベルでの効率向上,について,具体的な省エネルギー化ニーズ調査と技術的問題点(限界)の把握・研究を目的としている.

2.活動の状況

本研究委員会は,水圧駆動システム研究委員会(平成14年〜16年),水圧駆動推進研究委員会(平成16年〜18年),水圧駆動システムの新しい応用に関する研究委員会(平成18年〜21年),水圧駆動システムの有効利用に関する研究委員会(平成21年〜25年)の後を受けて,芝浦工業大学の伊藤和寿教授を委員長として平成264月に設置され,研究活動を進めている.本稿では,第2回委員会までの活動を紹介する.

1回委員会は芝浦工業大学大宮キャンパスにおいて1件の話題提供が行われた.()アイカムス・ラボの片野圭二氏より,「マイクロアクチュエータを用いた精密流体制御の事例紹介」と題して講演が行われた.プラスチック製のマイクロ歯車減速機を使用したマイクロアクチュエータをコア技術とし,応用製品として電動ピペットやバルブ用アクチュエータを量産化している.減速機の構造は遊星歯車機構を応用した「不思議歯車減速機」(特許取得済み)で,その動作原理が紹介された.小型かつ1段で高い減速比(約1/100)が得られるため,機器への組み込みに適している.流体用制御バルブへの応用例として,市販のニードル弁をアクチュエータで駆動し,流量計の信号をフィードバックすることによる流量制御が紹介された.

2回委員会は芝浦工業大学大宮キャンパスにおいて2件の話題提供が行われた.はじめに()リベックスの三木正之氏より,独自に開発された「アクアドライブシステム」について講演が行われた.双方向に回転可能なラジアルピストンタイプのポンプ・モータと,その応用例として,水圧シリンダと直結したポンプをACサーボモータで駆動するバルブレスの水圧サーボシステムが紹介された.ポンプ内部のピストン端部には静圧軸受が構成され,各要素間で水圧バランスが保たれており,ピストンには無理な力やトルクが作用しない.301500 rpmの幅広い範囲で高い機械効率と容積効率が得られている.また,さまざまな構造の変位センサやそれを内蔵した水圧シリンダも紹介され,これらの開発や今後の展望について意見交換を行った.

つぎにタイヨーインターナショナル()の柿木宗久氏より,「市場ニーズから見た水圧機器の動向と問題点」について講演が行われた.D社の水圧機器の変遷とともに,それらを組み込んだ水圧ユニットの納入事例が紹介された.現状では,3.5 MPa程度の低水圧用の機器で要求仕様を満たすものは国内外を見ても非常に少なく,機器の選定には非常に苦労している.低圧システムでは,各機器の圧力損失が大きく影響を及ぼすため,機器および構成要素の効率向上が課題という問題提起がなされ,討論を行った.

以上のような委員会を通じて,水圧機器メーカとユーザ企業関係者ならびに大学研究者の情報交換を行い,アクアドライブシステムの省エネルギー化のための今後の課題などについて意見交換を行っている.今後は,特に低圧・中圧域を中心とした省エネルギー化についてさらに検討を深める予定である.

すずき  けんじ

鈴木 健児君

19691112日生まれ.

1995年神奈川大学大学院博士前期課程修了.同年光洋精工()を経て,1998年神奈川大学工学部助手,2013年同助教,現在に至る.水圧駆動に関する研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,日本機械学会などの会員.博士(工学).

E-mail: suzuki@kanagawa-u.ac.jp

URL: http://www.mech.kanagawa-u.ac.jp/

                                                                            

 
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