資 料

 

アクアドライブシステムの省エネルギー技術開発研究委員会*

 

伊藤 和寿**

 

* 平成2853日原稿受付

** 芝浦工業大学システム理工学部,〒337-8570 さいたま市見沼区深作307

 

 

1.はじめに

本稿では,平成2641日から平成28331日までの期間に活動した「アクアドライブシステムの省エネルギー技術開発研究委員会」を紹介する.「アクアドライブシステム」という名称も一般に受け入れられつつあり,その有用性が認識された水圧駆動システムであるが,油空圧とは異なる市場意識が不可欠であり,それゆえ技術開発においては広い業界横断型の情報交換が必要となる.本研究委員会では,今後広い応用が期待されている低・中圧域を中心に,1) 摩擦や内部漏れによる損失低減化技術,2) 機器および構成要素の効率向上および小型化,3) システムレベルでの効率向上,について,具体的な省エネルギー化ニーズ調査と技術的問題点(限界)の把握・研究を目的とした.なお委員会は産学合わせ17名程度で構成された.

2.活動実績

研究委員会では原則として毎回2名の話題提供者にご講演をいただき,質疑応答を通して省エネルギー技術についてのポイントを明らかにするというスタイルを採った.話題提供の実績は以下の通りである.

1    片野圭二様(アイカムズ・ラボ),マイクロアクチュエータを用いた精密流体制御の事例紹介

2    柿木宗久様(タイヨーインターナショナル株式会社),水圧制御弁とその応用

       三木正之様(株式会社リベックス),市場ニーズから見た水圧機器の動向と問題点

3    飯尾昭一郎先生(信州大学),Active Charge Accumulatorに関する研究紹介

      鈴木健児先生(神奈川大学),低水圧流量調節弁およびロータリー型水圧サーボ弁の試作

4    佐藤郁也様(ワタナベフーマック株式会社),ADSを搭載した食品加工機械の製品化

      小林亘先生(芝浦工業大学),水道水駆動型マッキベン人工筋のモデル化

5    山田崇様(旭有機材株式会社),樹脂配管材料について

      岩崎宏文様(イハラサイエンス株式会社),エネルギー損失の小さい滑らかな流れの継手

6    宇根利典様(株式会社宇根鉄工所),水道水圧シリンダ式防水板の商品化の課題と展望について

      織井貞夫様(株式会社丸山製作所),水圧リフターの市場と動向

3.おわりに

食品加工機械,福祉装置におけるリフター,防災装置,リハビリテーション等,ADSのメリットを最大限に活かせる分野での導入が大きく進んでいる一方,中・低圧力域における省エネルギー化には,配管継手や材料開発等,意外なところにまだまだ研究の余地が残っているということを実感している.本研究会は幹事の鈴木健児先生により,今後別の形で継続されることになっており,是非多くの研究者,開発者の皆さまの参画を期待する次第である.

いとう かずひさ

伊藤 和寿君

196914日生まれ.株式会社小松製作所勤務を経て2001年上智大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了.同年同大学助手.2011年芝浦工業大学システム理工学部教授,現在に至る.アクアドライブシステム(ADS)・油空圧システムの制御と省エネルギー化,非線形制御理論,農業工学の研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,計測自動制御学会,日本生物環境工学会などの会員.博士(工学).

E-mail:kazu-ito@shibaura-it.ac.jp

URL: http://www.web.se.shibaura-it.ac.jp/kazu-ito/

                                                                                           

 
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