資 料
1DCAEによるフルードパワーシステム設計に関する研究委員会*
桜井 康雄**
* 平成30年6月8日原稿受付
**足利大学工学部,〒326-8558 栃木県足利市大前町268-1
平成28年4月から活動を始めた本研究委員会(委員長 九州工業大学 田中和博,幹事 足利大学 桜井康雄)は,大学側委員7名,企業側委員13名で構成されている.通常の2年間の活動期間が終了したが,1年間延長し平成30年度も活動を行っている.
1DCAEとは物事の本質を的確にとらえ見通しの良い形式でシステムをシンプルに表現し,その機能を考慮しつつ全体の適正設計を行う手法であり,システム設計の上流側(設計段階)で用いられる手法である.本研究委員会では,フルードパワーシステムの設計に1DCAEが利用されている現状を把握するとともに,1DCAEを行うために必要なマルチドメインソフトウェアの運用事例および運用上の問題点等を明らかにしてきた.この2年間の活動から1DCAEの運用状況および運用上の問題点が明らかになりつつある.一方,シーメンス(株)あるいはニュートンワークス(株)などの1Dソフトウェアベンダからの話題提供の際,「Modelica®」(オブジェクト指向のマルチドメイン・モデリング言語)を用いて既存のモデルと組み合わせた柔軟なシミュレーションを行った事例にしばしば出くわした.このような状況から,今後の1DCAEにおいて「Modelica®」が重要な位置を占めると考えられる.そこで,平成30年度は,主として「Modelica®」の運用事例および運用上の問題点等を明らかにすることを当初の目標として活動を開始した.これにより,本研究委員会の成果がより充実したものとなると期待される.
平成29年度は4回の研究委員会を実施した.第1回目は平成29年6月15日に開催した.ここでは,SMC(株)張護平委員より「空気圧機器選定プログラムの概要と計算モデル」と題した講演が行われ,同社が開発した空気圧機器選定プログラムの概要,計算モデル,計算事例に関して解説が行われた.第2回目は平成29年8月23日に行われた.ニュートンワークス(株) 広野友英氏および田中友和氏より,SimulationX®の油空圧モデリングと自動車用応用ライブラリに関する説明が行われた.さらに,新世代ツール連携規格FMIを用いた RecurDyn®とSimulationX®の連成計算について解説の行われた.第3回目は平成29年11月30日に行われた.ここでは,ジヤトコ(株)野武久雄委員より,「トランスミッションへの1Dシミュレーションの取り組みと課題」と題した話題提供が行われた.トランスミッションの機能とCVTの構成について説明,および,そのモデルと同社におけるCAEの取り組みと将来展望について説明が行われた.第4回目は平成30年3月7日に行われた.(株)IHI増田精鋭委員より,「可変ダンピング機構による差圧制御弁応答性改善のシミュレーション」と題した話題提供が行われた.ジェットエンジン用の燃料計量機構の概要と課題,この機構のシミュレーションモデルおよびその結果に基づく性能改善の予測について説明が行われた.
平成30年度の第1回委員会は6月21日に実施予定である.KYB(株)満嶋弘二氏により「KYBにおける1DCAEと品質工学への取り組み」と題した話題提供が行われる予定である.
本研究委員会は今年度まだ3回実施する予定である(開催予定日:9月11日,11月21日,2019年3月13日).興味のある方はぜひご参加ください.
著者紹介
さくらい やすお 桜井 康雄 君 1986年上智大学大学院博士前期課程修了.富士重工業(株),上智大学助手等を経て2000年足利工業大学講師,2001年同大学助教授,2007年同大准教授,2009年同大教授,2018年4月より足利大学教授,現在に至る.油空圧システムの動特性解析,ECF利用システムの開発に従事.日本フルードパワーシステム学会・日本機械学会の会員.博士(工学). |