資 料
OHC-Sim特別研究委員会*
桜井康雄**
* 2019年6月17日原稿受付
** 足利大学工学部,〒326-8558 栃木県足利市大前町268-1
特別研究委員会とは企業側からの研究費支援により実施される委員会である.本委員会(委員長 九州工業大学 田中和博,幹事 足利大学 桜井康雄)は,前年度に引き続き2019年4月より第22期を開始した.
OHC-Simとは,本学会の支援によりその基本バージョンが開発された国産初の油圧回路設計・動特性解析用シミュレーションパッケージである.その後,この特別研究委員会において改良が施され実用に耐えうるソフトとなった.本委員会では,OHC-Simのさらなる機能向上,サポートおよびその有効な使用方法の探索を行う.さらに,企業側委員が抱えるモデリングおよびシミュレーションに関する問題の検討も行う.
平成30年度は企業側委員の参加は得られなかった.そのため,本委員会は本委員会の運営委員会による活動のみで,1Dのコンピュータシミュレーションとモデル化に関する特別教育講座の実施とOHC-Simの発展を狙ったパワーフロー素子モデルを使ったOHC-Simによるシミュレーションの実現に関する検討を行った.
平成30年9月12日に実施した特別教育講座のタイトルは,「油圧機器・システムのモデリング入門:市販ソフトを利用するときに知っておくことはこれだ!」とした.参加者は22名(正・賛助会員:20名,学生員:2名)であった.ここでは,ブロック線図によるモデル化の基礎から始めてOHC-Simで利用されているボンドグラフ法のエッセンスのみを抽出し理解を容易にしたパワーフローによるモデリングの基礎と演習,パワーフローを実機に応用したモデル化の事例についての講義を行った.
平成30年9月13日には運営委員会を開催し,特別教育講座の総括とアンケート結果の分析を行い,次年度の本講座の実施について検討した.さらに,この教育講座で教えているパワーフローをOHC-Simで利用できるようにするための検討を行った.これが実現できれば,OHC-Simのユーザーカスタマイズ機能を積極的に利用できる可能性があるため,運営委員会では,この実現に向けて検討が必要であると考えている.
本学会の会員および賛助会員企業に所属している企業の方々はOHC-SimVer.2.8のダウングレード版であるOHC-Sim公開版が学会のホームページの会員ページから無償でダウンロード可能である.セットアップ方法と使用方法は本学会より出版した書籍「油圧システムのモデリングと解析手法」の第2章「OHC-Sim(JFPS40周年記念 公開版)機能・操作方法解説と例題集」に掲載されている.この書籍に掲載されている豊富な例題を通して,油圧回路の動特性のコンピュータシミュレーションの有用性およびOHC-Simの操作性の良さを体験していただきたい.このことは,高額な市販の1Dのシミュレーションソフトを使う前のスキル向上にもつながるものと考えている.OHC-Simに興味を持たれた方は,本学会において5万円で頒布しているフォートランコンパイラと一体化させたOHC-SimVer.2.8をお使いいただき,本学会を活性化するためにも,本委員会に参加していただくことを期待しております.
著者紹介
さくらいやすお
桜井康雄 君
1986年上智大学大学院博士前期課程修了.富士重工業(株),上智大学助手等を経て2000年足利工業大学講師,2001年同大学助教授,2007年同大准教授,2009年同大教授,2018年4月より足利大学教授,現在に至る.油空圧システムの動特性解析,ECF利用システムの開発に従事.日本フルードパワーシステム学会・日本機械学会の会員.博士(工学).
E-Mail: ysakurai(at)ashitech.ac.jp
URL: http://www2.ashitech.ac.jp/mech/sakurai/