資 料
1DCAEによるフルードパワーシステム設計に関する研究委員会*
桜井康雄**
* 2019年6月17日原稿受付
** 足利大学工学部,〒326-8558 栃木県足利市大前町268-1
平成28年4月から活動を始めた本研究委員会(委員長 九州工業大学 田中和博,幹事 足利大学 桜井康雄)は,大学側委員7名,企業側委員13名で構成されている.通常の2年間の活動期間が終了したが,1年間延長し平成30年度も活動を行った.
1DCAEとは物事の本質を的確にとらえ見通しの良い形式でシステムをシンプルに表現し,その機能を考慮しつつ全体の適正設計を行う手法で有り,システム設計の上流側(設計段階)で用いられる手法である.本研究委員会では,フルードパワーシステムの設計に1DCAEが利用されている現状を把握するとともに,1DCAEを行うために必要なマルチドメインソフトウェアの運用事例および運用上の問題点等を明らかにしてきた.しかしながら,この2年間の活動においては,モデルの精度あるいはモデルの最適化に関する議論は行われてこなかった.そこで,平成30年度は,「品質工学と最適化」をキーワードとして活動した.
平成30年度は4回の研究委員会を実施した.第1回目は平成30年6月21日に開催した.KYB(株)満嶋弘二氏より「KYBにおける1DCAEと品質工学への取り組み」と題した講演が行われた.まず,CAE導入の背景と歴史,CAEの基本コンセプトの説明が行われた.次いで,品質工学の基礎の説明とCAEによる解析主導型設計を推進した事例紹介が行われた.第2回目は平成30年9月11日に行われた.ここでは,シーメンス(株) のクリストフ ルドファン氏よる「DOE, Optimization and Robustness with Simcenter」と横島靖典氏による「深層学習を応用した油圧システム設計におけるテスト設計プロセス」と題した2件の話題提供が行われた.シミュレーションソフトウェアAmesimでは最適化と実験計画法のアルゴリズムが利用できること,自動車用のエンジン用コモンレール式インジェクタのロバスト性解析を通したその適用事例の説明,複合領域設計探査(最適化)ソフトウェアHEEDSとその適用事例の説明,油圧システムのテストシナリオの類似性と網羅性を検証することによるテスト回数削減の可能性の解説が行われた.第3回目は平成30年11月21日に行われた.ここでは,(株)日本科学技術研修所中澤登氏よる「統計解析業務パッケージJUSE-StatWorks/V5品質工学編の紹介」とニュートンワークス(株)脇本佑紀氏による「SimulationX-StatWorks連携ツールQEmasterの紹介」と題した2件の話題提供が行われた.ソフトウェアJUSE-StatWorks/V5の主な解析機能の説明,SimulationX-StatWorks連携ツールQEmasterの解説が行われた,SimulationX-StatWorks連携ツールQEmasterの紹介が行われた.第4回目は平成31年3月13日に行われた.(株)ウェーブフロント宮川哲氏より,「3D-CFDソフトウェアPumpLinx における油圧ポンプおよび油圧制御弁のCFD解析と応用例」と題した話題提供が行われた.シミュレーションソフトウェアPumpLinxの基本的特徴と数種の応用例が解説された.
本研究委員会は今年度で活動期間が3年となり期間満了のため終了した.この委員会で1Dシミュレーションに関連する活動は第22期OHC-Sim特別研究委員会に引き継いでいく.この特別研究委員会の第1回目は9月9日に開催する.興味のある方はぜひご参加ください.
著者紹介
さくらいやすお
桜井康雄 君
1986年上智大学大学院博士前期課程修了.富士重工業(株),上智大学助手等を経て2000年足利工業大学講師,2001年同大学助教授,2007年同大准教授,2009年同大教授,2018年4月より足利大学教授,現在に至る.油空圧システムの動特性解析,ECF利用システムの開発に従事.日本フルードパワーシステム学会・日本機械学会の会員.博士(工学).
E-Mail: ysakurai(at)ashitech.ac.jp
URL: http://www2.ashitech.ac.jp/mech/sakurai/