資 料

 

アクアドライブシステムの新たな構成機器の開発と
その制御に関する研究委員会*

 

鈴木健児**

 

* 2019822日原稿受付

** 神奈川大学,〒221-8686神奈川県横浜市神奈川区六角橋3-27-1

 


1.はじめに

本研究委員会では,「アクアドライブシステム」の新たな構成機器(ポンプ,制御弁,アクチュエータ)の開発と,その制御に必要な基礎実験及びその応用について,技術的課題の調査・研究や委員間の情報共有を目的とする.ただし,研究対象のトピックはこれに限定せず,水圧技術関連全般を扱った.

2.活動の状況

本研究委員会は,平成28年度から2年間設置された後,平成30年度の1年間期間延長された.この活動期間中,研究委員会を神奈川大学において1回開催し,講演者と委員との質疑応答を通して,新たな水圧機器開発における技術的課題を検討した.提供された2件の講演の概要は以下のとおりである.

1件目は,信州大学の飯尾昭一郎准教授より,「水圧制御弁のキャビテーション可視化に関する研究」について講演が行われた.水圧駆動システムの高精度な制御に不可欠なスプール弁について,その絞りにおけるキャビテーション発生形態の様子を高速度カメラで観察し,圧力流量特性及び振動騒音特性との関係を評価した.キャビテーション発生形態は,スプール弁絞りの開口幅,圧力差,下流圧に依存することを実験的に明らかにした.これにより,スプール弁を有する水圧制御弁の性能試験時におけるキャビテーション発生の抑制方法について,重要な知見が得られた.

2件目は,神奈川大学の鈴木健児助教より,「低速高トルク型水圧モータの設計及び内部機構の試作」の講演が行われた.福島第一原発の廃炉作業用に開発が進められている水圧駆動ロボットの,クローラを駆動する用途を想定して,2種類の低速高トルク型水圧モータを設計した.第1の水圧モータは,出力軸の角速度の脈動が理論上ゼロになるよう,4つのピストンとカム機構を組み合わせた.第2の水圧モータは,5つのピストンと偏心カムを組み合わせるとともに,モータ内部に減速機構を統合した.それぞれの水圧モータの,新たに設計した内部機構を試作して実験を行い,設計の妥当性を検証した.今後,水圧モータ全体の試作と性能測定を行う予定である.

3.おわりに

「アクアドライブシステム」の新たな構成機器の開発とその制御に関する研究委員会の活動内容について総括した.今後も「アクアドライブシステム」の特長が生かせる新たな適用分野や応用事例を継続的に調査するとともに,研究成果の発信に努めたいと考えている.

著者紹介

Suzukiすずきけんじ

鈴木健児 君

1995年神奈川大学大学院博士前期課程修了.同年光洋精工()を経て,1998年神奈川大学工学部助手,2013年同助教,現在に至る.水圧駆動に関する研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,日本機械学会,日本設計工学会などの会員.博士(工学).

E-mail: suzuki@kanagawa-u.ac.jp

URL: http://www.mech.kanagawa-u.ac.jp/