資 料

 

深層学習を活用したフルードパワーシステムのモデル化と制御に関する研究委員会*

 

小林 亘**

 

* 2020619日原稿受付

** 岡山理科大学工学部知能機械工学科700-0005 岡山県岡山市北区理大町1-1

 


1.はじめに

フルードパワーシステムは,その非線形な特性から制御困難な対象として様々なアプローチがとられてきた.この制御対象としての複雑な特性が,高い出力密度や直線・回転運動の変換が容易等の優れた特性を有するにも関わらず,多くのアプリケーションに適用されない要因の1つとなっている.一方,複雑なシステムをモデル化し制御する方法として,深層学習が近年注目されている.

本研究委員会では,深層学習をフルードパワーシステムに適用する場合の効果の検証,およびその技術的課題を明らかにすることを目的としており,深層学習の可能性を見極めるとともにフルードパワーシステム活用分野の拡大を目指している.また,関連分野に関する話題提供に加え,委員によるグループワークを取り入れ,深層学習に関する情報共有を広く行うことを目的としている.

2.委員会の活動状況

 委員会は2019年度に2回開催され,ワープショップ形式によるグループディスカッションおよび深層学習に関する講演が行われた.第1回研究委員会では,鞄立製作所の清水自由理様より,深層学習の基礎に関する講演が行われた.人工知能と機械学習および深層学習の関係や深層学習の代表的な機能についてご紹介いただき,手法例としてConvolution Neural NetworkRecurrent Neural NetworkLong Short-Term MemoryGenerative Adversarial Networkについてご説明いただいた.また,深層学習に使えるツールとして,TensorFlowChainerといったオープンソースライブラリと,これらをサポートしているRasberry PiDev boardといった安価なコントローラに関する情報をご紹介いただいた.その後,2グループに分かれてフルードパワーシステムにおける課題に関するワークショップを開催した.ワークショップでは各委員が実務上抱える課題に関して活発な議論が行われ,最後にグループ毎の発表が行われた.

 第2回研究委員会では,芝浦工業大学の村山栄治先生より,強化学習と制御系設計に関する講演が行われた.強化学習の概要についてご説明いただき,状態価値関数,Bellman方程式,行動価値関数といった強化学習および動的計画法の基礎的事項,Q-learningDeep Q-NetworkDeep Deterministic Policy Gradientなどの強化学習アルゴリズムについてご紹介いただいた.また,MATLABを用いた数値計算例としてDDPGによるマス・ダンパ・バネシステムの制御についてご紹介いただいた.グループワークでは,前回設定した課題に対して,実際に検証を行う上での技術的課題や検証施設,アクションプランについて検討した.今後は,設定した課題を対象とした実験環境の構築および深層学習アルゴリズムの検証,外部専門家による講演および本研究委員会のアプローチに対するフィードバックなどを行う予定である.

著者紹介

小林こばやし 亘わたる 君

2015年芝浦工業大学大学院理工学研究科博士課程機能制御システム専攻修了.同大学ポスドク研究員,2016年岡山理科大学助教を経て,2018年同大学講師,現在に至る.日本フルードパワーシステム学会,日本機械学会,計測自動制御学会などの会員.博士(工学)

E-mail: kobayashi(at)are.ous.ac.jp