１．はじめに

本稿では，2020年度に発刊された日本フルードパワーシステム学会論文集，JFPS International Journal of Fluid Power System，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集（2020年春季フルードパワーシステム講演会はコロナ禍のため中止）の中から，空気圧分野に関する研究を調査した結果を報告する．

２．日本フルードパワーシステム学会論文集

2020年度は空気圧に関する論文としては，参考文献1)から4)までの4件が掲載された．分類としてはいずれの論文も，ソフトアクチュエータ・空気圧人工筋の製作や制御に関するものであった．

３．JFPS International Journal of Fluid Power System

表題の国際ジャーナルにおいて，2020年度は空気圧に関する論文としては，参考文献5)から7)までの3件が掲載された．そのうち2件はエネルギー効率に注目した論文で，あとの1件は位置センサを用いないリハビリテーション装置の姿勢制御に関するものであった．

４．2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集

2020年12月8日，9日に岡山理科大学で開催された2020年度の秋季講演会においては，空気圧に関する一般セッションでの発表が２セッションで計9件あり，また伊藤和寿先生（芝浦工業大学教授）によるオーガナイズドセッション「フルードパワーにおける制御技術の新展開」が企画され，同セッションの4件の発表のうち2件が空気圧に関する発表があった．さらに，高岩昌弘先生（徳島大学教授）によるオーガナイズドセッション「フルードパワーにおける要素技術の新展開」が企画され，同セッションの8件の講演のうち７件が空気圧に関する発表であった．合計すると，参考文献8)から25)までの計18件が空気圧に関係する発表であった．さらに，本秋季講演会では，堂田周治郎先生（岡山理科大学特任教授・前副学長）による特別講演「流体制御技術とともに48年」があり，主に空気圧の計測・制御およびアクチュエータの研究と教育に関するご講演であった²⁵⁾．

５．おわりに

以上，平成27年度の論文発表を概察すると，全体的には，ロボティクスや医療福祉機器への応用を目指した研究発表が多い一方で，断震技術や超精密切削研削加工，空気圧配管内のエネルギー回収，等温化圧力容器を用いた継ぎ手の特性計測，新しいサーボ弁機構の提案と解析など，基礎解析や様々な方面への応用研究も見られたのが，2020年度の空気圧分野の研究活動の動向であった．

参考文献

1）　橋本将宏, 西岡靖貴, 安田寿彦, 山野光裕：プリーツ式収縮型極軽量空気圧ソフトアクチュエータの設計，日本フルードパワーシステム学会論文集，Vol.51, No.1, p.1-8 (2020)

2）　門脇惇, 佐々木大輔, 萱原多久実：ウェアラブルロボット用空気圧供給システムに用いる容積可変タンクのモデル化，日本フルードパワーシステム学会論文集，Vol.51, No.5, p.9-15 (2020)

3）　西岡靖貴, 安田寿彦, 山野光裕：看護動作の支援を目的とした空気圧式コルセットの設計に関する基礎実験，日本フルードパワーシステム学会論文集，Vol.51, No.2, p.17-24 (2020)

4）　小川草太, 脇元修一, 神田岳文, 大村健人, 安藤克倫：製紐機を用いたインダクタンス型スマート人工筋の製作手法の確立，日本フルードパワーシステム学会論文集，Vol.51, No.2, p.25-31 (2020)

5）　LIM, J., IIDA, K., TADANO, K., KAGAWA, T. : Experimental Study on Energy Efficiency of Pneumatic Booster Valves with Energy Recovery, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol. 13, Issue 1, p.1-8 (2020)

6）　KAZAMA, T. : Transmitted Power of Piping and Wiring in Hydraulic, Pneumatic, and Electric Drive Systems, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol. 13, Issue 2, p.9-16 (2020)

7）　SHIMOOKA, S., HANE, Y., AKAGI, T., DOHTA, S., KOBAYASHI, W., SHINOHARA, T., MATSUI, Y. : Development and Attitude Control of Washable Portable Rehabilitation Device for Wrist without Position Sensor, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol. 13, Issue 3 p.25-34 (2020)

8）　広田尚希，吉満俊拓，武石桐生，香川利春，三瓶久仁：空気圧を用いた戸建て住居の浮上による断震技術，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.1-3 (2020)

9）　田中智博，加藤友規，大坪樹，小山敦弘，矢澤孝哲：砥粒加工のための静圧空気軸受のコンプライアンス制御，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.4-6 (2020)

10）渡部敦也，吉満俊拓，武石桐生，香川利春：アシストスーツのためのエネルギ回生機能を持つ空気圧アクチュエータ，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.13-15 (2020)

11）保井拓巳，奥井学，中村太郎：空気噴出を利用した力覚による情報伝達インターフェースの開発－ノズル基礎特性の評価－，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.16-18 (2020)

12）冨田昇吾，村山栄治，川上幸男：小型空気圧シリンダ駆動による多関節ハンド型マニピュレータの開発，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.19-21 (2020)

13）澤橋龍之介，小野塚祐樹，田中俊也，奥井学，中村太郎：人工筋肉の収縮を用いたクラッチ機構をもつ装着型力覚提示装置の摩擦提示性能の定量的評価，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.22-24 (2020)

14）石田椋，藤田壽憲：マイクロエジェクタの 3 次元 CFD 解析，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.25-27 (2020)

15）岸浩太郎，川田龍，田中恭太郎，中尾光博：一次元数値モデルによる乱流遷移を含む気体管路過渡応答流れの推定，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.28-30 (2020)

16）川田壌，稗田幾朗，中尾光博：圧電素子を用いた空気圧配管内のエネルギー回収に関する基礎検討，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.31-33 (2020)

17）河口雄規，田中恭太郎，中尾光博：1 次元モデルによる円管内圧縮性流れの差圧─流量特性の検討，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.34-36 (2020)

18）村田幸史，吉満俊拓，武石桐生，香川利春：等温化圧力容器を用いた継手の特性計測，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.37-39 (2020)

19）木田圭祐，木俣雄太，早川恭弘，石山時宗：シリコーン外殻型空気圧ソフトアクチュエータの開発，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.75-77 (2020)

20）大永昂汰，赤木徹也，堂田周治郎，小林亘，篠原隆：逆駆動性を有する空気圧駆動股関節リハビリテーション機器の試作，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.78-80 (2020)

21）武内健史郎，羽根佑典，赤木徹也，堂田周治郎，小林亘，篠原隆：伸長型柔軟空気圧アクチュエータを用いた正四面体型アクチュエータの試作，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.81-83 (2020)

22）横田雅司，高岩昌弘：免荷型空気式パワーアシスト装置を用いた持ち上げ支援の動作解析，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.84-86 (2020)

23）小林卓巳，赤木徹也，堂田周治郎，篠原隆，下岡綜：ゲート機構を用いた小型サーボ弁の改良，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.90-92 (2020)

24）脇元修一，長岡和弥，作間祐仁，安藤克倫，松田大成，神田岳文：紐製造技術を用いた空気圧人工筋肉への機能性繊維複合方法，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，p.93-95 (2020)

25）神田岳文，太田唯佑，橋本航，脇元修一，鈴森康一，浮田貴宏，難波江裕之：人工筋の制御を目的とした微粒子励振型流量制御弁の改良，2020年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集，特別講演， (2020)

著者紹介

加藤友規

加藤かとう友規とものり　君

2007年東京工業大学大学院博士課程修了．2004年東京都立工業高等専門学校助手（2007年同助教），2010年福岡工業大学助教，2012年同准教授，現在に至る．空気圧の計測・制御に関する研究に従事．日本フルードパワーシステム学会などの会員．現在，本学会の理事・国際交流委員長を担当．博士（工学），技術士（機械部門）．

E-mail：t-kato(at)fit.ac.jp