解 説
SMC高田賞受賞について*
下岡 綜**
* 2021年6月5日原稿受付
**岡山大学学術研究院自然科学学域,〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1
図6,7の結果より,EFPAの圧力と湾曲角を求めるための近似式を導出する.ここで,操作前の圧力の時点での1個の給気操作後の圧力変化分 [kPa]は次の式で近似できる.
ここで,iとkは,それぞれ機器内のEFPA(i = 1,2,3)を示す係数と弁操作の回数を意味する.また同様に1回の排気操作による圧力変化は次のように近似できる.
また,弁操作後の圧力は,下記の実験式を使用して計算できる.
つぎに図7より,弁操作による湾曲角/圧力変化の関係から1回の操作における湾曲角とEFPA内圧変化の比率(Δβ/Δ)は,以下の実験式で近似することができる.
給気の場合
排気の場合
ここで1回の弁操作後の湾曲角度は次式で求める.
各EFPAの制御方式として,次式に示すデッドゾーンを有するon/off制御方式を使用した.
ここで,は各EFPAの目標湾曲角度を示す.
姿勢制御では,目標姿勢として湾曲角度を一定の90度に設定し,湾曲方向角αを5度ごとに0〜360°変化するように設定した.図8は,モデルを用いた姿勢制御の様子を示す.各図は,試作機器を下から撮影したものである.図8より,赤い破線の円は,下から見た視点での目標軌道を示す.図8から,試作機器の終端部は目標の軌道に沿って動いていることがわかり,提案した近似モデルは,試作機器を軌道制御に適用するのに有効であることが確認できる.また,本機器は手首の可動域が超えない限り,患者に対して他動運動を与えることができる.今後の課題として,手首の可動域を改善することができる機器に改良するために,防水性のある力や曲げセンサの開発が必要である.また,疼痛管理のためにマスタースレーブ制御の適応も検討したい.
1) Nagata, Y. ed.: Soft Actuators, Forefront of Development, NTS Ltd., p. 291-335 (2004)
2) Ishii, M., Yamamoto, K. and Hyodo, K.: Stand-Alone Wearable Power Assist Suit, Development and Avail-ability, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 17, p. 575-583 (2005)
3) Kobayashi, H., Shiban, T. and Ishida, Y.: Realization of all 7 motions for the upper limb by a muscle suit, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 16, p. 504-512 (2004)
4) Matsui, Y., Akagi, T., Dohta. S., Aliff, M. and Liu, C.: Development of Portable Rehabilitation Device Using Flexible Spherical Actuator and Embedded Controller, Lecture Notes in Electrical Engineering 293, Volume 1, Springer, p. 231-238 (2014)
5) Matsui, Y., Akagi, T., Dohta. S., Kobayashi, W., Tamaki, H.: Development of Flexible Spherical Actuator with 3D Coordinate Measuring Device, Journal of Flow Control Measurement & Visualization, Vol. 6, No. 2, p. 95-106 (2018)
6) Suzuki, Y., Akagi, T., Dohta, S., Kobayashi, W., Tamaki, H., Matsui, Y. and Shimooka, S.: Development of Tetrahedral Type Rehabilitation Device Using Flexible Pneumatic Actuators, International Journal of Mechanical Engineering and Robotics Research, Vol. 7, No. 4, p. 409-414 (2018)
7) Shimooka, S., Akagi, T., Dohta, S., Kobayashi, W and Shinohara, T.: Improvement of Home Portable Rehabilitation Device For Upper-Limbs, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol. 12, No. 1, p.10-18 (2019)
下岡綜 君
2020年岡山理科大学大学院工学研究科博士課程(後期)システム科学専攻修了.同年松江工業高等専門学校電子制御工学科助教を経て,岡山大学学術研究院自然科学学域助教となり,現在に至る.ソフトアクチュエータを用いた医療・福祉機器の研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,日本機械学会などの会員.博士(工学).
E-mail:shimooka(at)okayama-u.ac.jp
図7 弁操作前の圧力と湾曲角変化/圧力変化の関係
図8 機器による姿勢制御の様子