解 説

2022年度油空圧機器技術振興財団論文顕彰について*

 

桜井 康雄**

 

* 202362日原稿受付

**足利大学工学部,〒326-8558栃木県足利市大前町268-1

 

1.はじめに

日本フルードパワーシステム学会の選考で油空圧機器技術振興財団論文顕彰をいただきましたこと,大変光栄に思う.誌上をお借りして財団の方々をはじめ関係各位に厚く御礼申し上げる.本稿では,受賞対象論文「Research on an Oil-hydraulic Component to Reduce Pressure Pulsation1)の概要を紹介する.

2.研究概要

2.1 背景と目的

油圧システムにおいて,容積形ポンプによって生じる圧力脈動は振動や騒音などを引き起こす.この圧力脈動を小さくするために一般的にはアキュムレータが用いられる.しかしながら,アキュムレータはガス漏れによる性能低下を防止するため,定期的なメインテナンスが必要である.さらに,その大きさの関係上,油圧システムの大きさを小さくすることが難しい場合がある.それゆえ,油圧システムのブレークスルーを補機の立場から実現するためには,圧力脈動を低減できる新しい油圧素子の開発が必要であるものと考えられる.

そこで,著者らは,ウレタンゴムの弾性を利用し配管にインラインで取り付け可能で配管上部に取り付けスペースを必要としない単純な構造を有する圧力脈動抑制素子を提案・試作し,実験的にその性能を明らかにした.

2.2 提案した圧力脈動抑制素子の原理と構造

筆者らが提案した圧力脈動低減素子の概要図を図1に,組み立て時および部品の写真を図2に示す.この素子は,全長200mm,全高150mmで,金属管,ウレタンゴムチューブ,漏れ防止のためのゴムパッキン,フランジおよび配管接続用の継手で構成されている.なお,金属管のすきま間隔の調整可能範囲は0mmから9mmである.

1に示した素子により圧力脈動を低減する原理を図3に示す.作動油がウレタンゴムの内部に流れ,内部の圧力が上昇してウレタンゴムが膨らみ,金属管のすきまから飛びだす.この部分が微少振動することで内部容積が変化し,圧力脈動を低減する.

2.3 性能実験

4に示した実験装置を用い,油圧ポンプで管路に送油した場合の圧力脈動低減素子の性能を調べた.このとき,金属管のすきま間隔Lとウレタンゴムチューブの硬度Hを変化させた.

作動油を十分循環させた後,リリーフ弁と絞り弁の開度を調節し,素子上流側の圧力の平均値を3.5MPaに,管内を流れる作動油の流量を約2.50×10-4m3/s15L/min)に設定した.このときの圧力を圧力センサにより計測し,サンプリングタイム0.1ms(周波数:104Hz)でデータロガーに記録した.なお,作動油の温度は約30℃とした.

代表的な実験結果を図5L=4mmH=A70),図6L=4mmH=A50)および図7L=2mmH=A50)に示す.図5では圧力脈動低減素子下流側の圧力の変動幅が圧力の平均値から±0.097MPaとなり,上流側の圧力の変動幅の約53%となっている.ウレタンゴムの硬度を小さくし柔らかくした図6の場合では,素子下流側の圧力の変動幅が圧力の平均値から±0.070MPaとなり,上流側の圧力の変動幅の約43%になっている.金属管のすき間間隔を小さくした図7に示した場合では,素子下流側の圧力の変動幅が圧力の平均値から±0.084MPaとなり,上流側の圧力の変動幅の約53%になっている.よって,本研究で提案した素子は,金属管のすきま間隔Lとウレタンゴムチューブの硬度Hを適切に選べば,素子下流側圧力の変動を大幅に低減できることがわかる.

6に示した圧力脈動の実験結果の周波数解析結果を図8に示す.本研究で使用した油圧ポンプはピストンポンプであり,実験時の回転周波数は25Hz,ピストンの本数は9 本である.よって,相乗積は225 となり,この図では,この相乗積の整数倍の周波数の振幅が大きくなっている.この周波数解析結果より,素子下流側では,相乗積の約2倍の周波数である444Hz以降の周波数における振幅が特に小さくなり,その結果,圧力脈動が小さくなっていることがわかる.

3.おわりに

ここでは,受賞論文の概要を紹介した.今後は提案した圧力脈動素子の数学モデルについて検討する予定である.最後に本研究に携わってくれた研究室の学生各位にも御礼を申し上げる.

参考文献

1) Sakurai, Y., Hashimoto, M., Maehara, M., Hyodo, N. : Research on an Oil-hydraulic Component to Reduce Pressure Pulsation, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol.15, No.1, p.26-32 (2022)

 

著者紹介

桜井 康雄

さくらいやすお

桜井康雄 君

1986年上智大学大学院博士前期課程修了.富士重工業(株),上智大学助手等を経て2000年足利工業大学講師,2001年同大学助教授,2007年同大准教授,2009年同大教授,20184月より足利大学教授,現在に至る.油空圧システムの動特性解析,ECF利用システムの開発に従事.日本フルードパワーシステム学会・日本機械学会の会員.博士(工学)

E-mail: sakurai.yasuo@g.ashikaga.ac.jp

URL: https://www2.ashitech.ac.jp/mech/sakurai/

 


 


図1 提案した圧力脈動抑制素子概要図

 


(a) 組み立て時

(b) 部品
図2 圧力脈動抑制素子写真

 


図3 圧力脈動抑制原理

 


図4 実験装置

 


(a)上流側圧力

(b)下流側圧力
図5 実験結果の一例(L=4mm,H=A70)

 


(a)上流側圧力

(b)下流側圧力
図6 実験結果の一例(L=4mm,H=A50)

 


(a)上流側圧力

(b)下流側圧力
図7 実験結果の一例(L=2mm,H=A50)

 


(a)上流側圧力

(b)下流側圧力
図8 周波数分析結果(L=4mm,H=A50)