1.はじめに
本研究委員会は,深層学習をフルードパワーシステムに適用する場合の効果の検証およびその技術的課題を明らかにすることを目的として2019年に設置され,1年の活動延長を含む3年間の委員会活動を行ってきた.また,これまで得られた知見を広く活用するため,対象を「モデル化と制御」から「フルードパワーシステム全体」に拡大し,2022年度に「深層学習を活用したフルードパワーシステムに関する研究員会」を新たに設置している.以下では2023年度の活動報告に加えて1年の延長申請を行う2024年度の活動計画について簡単に紹介する.なお,2023年度は大学および企業委員を合わせて12名が参加している.
2.研究委員会の活動状況および2024年度の活動計画
2023年度の研究委員会は全5回が開催された.2023年度では,これまでに得られた知見を基にMcKibben型人工筋の変位を画像から推定可能なベンチシステムを構築し,得られた実験データを用いて深層学習の効果や可能性について検討することを主な活動とした.具体的には,参加委員を大きく3つのチームに分け,異なるアプローチを適用し比較検討することにより,それらの効果について検証し深層学習をフルードパワーシステムへ適用した際の有用性や課題について情報共有を図った.しかしながら,ベンチシステムの構築が大幅に遅れてしまったことにより十分な検討ができないまま2023年度の活動を終えるに至った.なお,2023年度には,上記以外に「国内外の知能ロボット研究の動向」と題した(株)日立製作所の坂井様のご講演やAAAI2024のオンライン参加報告による情報共有,ChatGPT(生成AI)のフルードパワーシステムへの活用に関する検討など,多くの研究委員会活動が実施された.
2024年度は上記の活動を引き継ぎ,深層学習に関するさまざまなアプローチの適用および比較検証を予定している.また,本研究委員会で当初の目的としていた若手技術者の交流や情報共有を促進すべく,対面形式での開催についても積極的に検討していく予定となっている.
3.おわりに
2022年度に引き続きオンライン形式での開催が主となった2023年度の活動では,全5回の研究委員会が開催され,委員間で活発な意見交換がなされた.第5回ではコロナ禍以降初めての対面開催も実施することができ,顔を合わせながら深層学習の可能性を検討する材料を提供する場となった.2024年度も引き続きさまざまなアプローチによる検証を予定している.深層学習に興味がある,もしくは深層学習のフルードパワーシステムへの活用を検討している皆様のご参加も心よりお待ちしている.
著者紹介
こばやし わたる
小林 亘 君
2015年芝浦工業大学大学院理工学研究科博士課程機能制御システム専攻修了.同大学ポスドク研究員,2016年岡山理科大学助教を経て,2018年同大学講師,2024年同大学准教授,現在に至る.日本フルードパワーシステム学会,計測自動制御学会などの会員.博士(工学).
E-mail: w-kobayashi(at)ous.ac.jp