資 料
油圧機器のトライボロジーなど基盤技術に関する基盤研究委員会*
西海 孝夫**
* 2025年3月16日原稿受付
**芝浦工業大学 UniKL JUPプログラム非常勤講師,〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-50
1.はじめに
本研究委員会は,油圧機器のトライボロジーなどさまざまな基盤技術の発展を目的に2015年4月に特別委員会として設置され、本年にて10年目を迎えた.2019年度からは基盤強化委員会のもとでの基盤研究委員会に名称変更となり、地道ながら活動を続けている.本稿では,昨年度の議事録をもとに本委員会の活動内容について報告する.
2.研究委員会の活動状況
2024年度の活動は諸般の事情でオンラインにて1回だけ行われ,状況は以下のとおりである.
日時:2024年7月8日(月) 14:00〜16:30,Microsoft Teams利用,出席者:20 名
(a) 話題提供者: 柳田 秀記氏(豊橋技術科学大学 名誉教授)
題目:「自動変速機用油圧ポンプのロータ挙動と摩擦トルク特性」
自動変速機用のジーロータポンプと平衡形ベーンポンプにギャップセンサを組み込んでロータ挙動を測定し,摩擦トルク特性との関連を考察した.また,油圧作動油中の気泡含有率を変化させてロータ挙動と摩擦トルク特性に及ぼす影響を調査した.ジーロータポンプインナロータ及び平衡形ベーンポンプロータは隣接する壁面のほぼ中央で回転を周期として傾転角度を変化させながら回転すること,及びジーロータポンプアウタロータはケーシング側壁に接近して回転することを示した.気泡含有によりロータ挙動はやや影響を受けるが,摩擦トルクは気泡含有率の増加に伴い低下すること,そして,ロータ挙動と摩擦トルク特性への気泡径の影響は小さいことを示した.また,既存の摩擦トルク数式モデル中の粘性摩擦トルク成分の式の意味を明確にするとともに,気泡含有率を新たなパラメータとして含めた数式モデルにより実測結果が良好に表現できることが示された.
(b) 話題提供者: 鈴木健太氏(鞄立製作所 研究開発グループ)
題目:「斜板式アキシャルピストンポンプのリテーナの変形を考慮したスリッパ部挙動評価」
油圧を用いた回転駆動システムは比較的小型の機器で大きな力を発揮でき,力,速度,位置などを正確かつ高い応答速度で制御可能である.回転運動を油圧エネルギーに変換する斜板式アキシャルピストンポンプは,建設機械や産業機械などに幅広く採用されている.斜板式ピストンポンプは,しゅう動部隙間からの作動油の漏れ,油膜のせん断や固体接触に起因する摩擦損失がポンプの性能に大きく影響する.焼き付きなどに対する信頼性向上の観点からも,運転中の部品の挙動を予測する技術の構築が求められている.スリッパ挙動の予測には,急激な油圧の変化や遠心力,しゅう動部の油膜による潤滑を考慮する必要があり,そのメカニズムは非常に複雑である.本発表では,スリッパを保持するリテーナや,スプリングの影響も考慮した実機ポンプにおけるスリッパ挙動を予測する手法に関して紹介いただいた.
3.おわりに
最後に,話題提供や議事録作成にご協力いただいた柳田秀記 先生、鈴木健太 委員に対し、また日頃より本委員会の業務に尽力頂いている高辻和正 幹事と一柳隆義 幹事に対し,この場をお借りして御礼申し上げる.
にしうみ たかお
西海 孝夫 君
1976年青山学院大学理工学部機械工学科卒業,1979年成蹊大学大学院工学研究科博士前期課程機械工学専攻修了,1983年成蹊大学助手,1992年防衛大学校助手,講師,助教授を経て2007年同校教授, 2019年芝浦工業大学MJHEPプログラム機械工学科教授,現在 芝浦工業大学 非常勤講師.油圧および流体力学に関する教育研究に従事,日本フルードパワーシステム学会員,博士(工学)
E-mail: nishiumi(at)shibaura-it.ac.jp