展 望
2025年度の機能性流体分野の研究活動の動向*
吉田 和弘**
* 2026年7月13日原稿受付
**東京科学大学 総合研究院 未来産業技術研究所,〒226-8503神奈川県横浜市緑区長津田町4259-R2-42
機能性流体の2025年の研究動向の概観のため,文献のAbstractにおけるキーワードで2025 年の英文のジャーナル論文を検索した.ここでは,ERF,MRF,磁性流体,およびECF/EHD流体を取り上げた.
ERF関連として,Abstractに「electrorheological」,「electro-rheological」または「ER-fluid」を含み,かつ「fluid」を含む文献を検索した結果,68件ヒットした.被引用数最多の文献はERFを用いた剛性可変アクチュエータに関するもので,被引用数は25であった.次に被引用数が多い文献はER効果関連,ERF関連,ERエラストマー関連の3件で,被引用数は7であった.
MRF関連として,Abstractに「magnetorheological」,「magneto-rheological」または「MR-fluid」を含み,かつ「fluid」を含む文献を検索した結果,580件ヒットした.被引用数最多の文献はMRエラストマーを用いた制振に関するもので,被引用数は83であった.次に被引用数が多い文献はMR効果関連で被引用数42,その次もMR効果関連で被引用数39であった.
磁性流体関連として,Abstractに「magnetic-fluid」または「ferrofluid」を含み,かつ「fluid」を含む文献を検索した結果,283件ヒットした.被引用数最多の文献は磁性流体を用いたポンプに関するもので,被引用数は51であった.次に被引用数が多い文献はMHD(magneto-hydro-dynamics)関連で被引用数は34,その次は医用磁性流体関連で被引用数は27であった.
ECFおよびEHD流体関連として,Abstractに「electroconjugate」または「electro-conjugate」を含みかつ「fluid」を含む文献と,「electrohydrodynamic」または「electro-hydro-dynamic」を含みかつ「fluid」を含む文献を検索した結果,332件ヒットした.被引用数最多の文献は,EHDを用いたセンサ加工法に関するもので被引用数は76であった.次の被引用数が多い文献はEHDによる加工法を用いたアクチュエータ関連で被引用数は48,その次はEHD効果関連で被引用数は47であった.
以上の結果より,MRFに関連する研究,開発が盛んに行われていたことがわかった.次いで,ECF/EHD流体,磁性流体,ERFに関するものであった.
Yoshidaは,パワーマイクロロボットの要素として,積層形ERマイクロバルブを用いたソフトマイクロアクチュエータ,交流圧力源システムなどを紹介している1).Ishizekiらは,積層形ERマイクロバルブを用いた交流圧力駆動のソフトマイクロフィンガの試作,評価を行っている2).青柳らは,交流圧力源システムのため,チェック弁と閉鎖の動作を切換えるERダンパ制御チェック弁を提案している3).猪股らは,繊毛アクチュエータアレイなどのため,交流圧力をERバルブで同期整流するマルチポート圧力制御プラットフォームを提案している4).
松谷らは,水ベース感温性磁性流体の磁場と加熱による駆動圧特性を実験的に検討し,熱輸送装置への応用を図っている11).上野らは,磁性流体と非熱プラズマを用いた誘電体バリア放電プラズマアクチュエータの連続配置の特性を実験的に検討している12).三田らは,外部磁場と熱入力により駆動する水ベース感温性磁性流体を用いた容器型熱輸送装置の特性を実験的に検討している13).寄木らは,磁気ビーズを封入した細胞サイズの液滴を外部磁場により操作し細胞間力を測定するため,液滴生成などを実験的に検討している14).
2025年度の機能性流体関連の研究動向について概観した.2025年度から本学会に「機能性流体スマートフルードパワーシステムに関する基盤研究委員会」(委員長:慨martTECH Lab.&東北大学 中野政身氏)が設置され,精力的に活動が行われている.機能性流体に関する研究,開発の今後のますますの活発化が期待される.
1) Yoshida, K.: Micro Hydraulic System Technologies for Power Microrobots, Abstract Book of ICMDT2025, p.47-48, (2025)
2) Ishizeki,K., Yoshida,K., Kim, J.-w.: Fabrication and Evaluation of Soft Microfinger Integratable with Stacked ER Microvalve Unit for Alternating Pressure System, Abstract Book of ICMDT2025, p.60, (2025)
3) 青柳拓未,吉田和弘,金俊完:交流圧力源システムのためのERダンパ制御チェック弁の提案,日本機械学会山梨講演会2025予稿集,p.36-37 (2025)
4) 猪股万太郎,吉田和弘,金俊完:ERFを用いた増地ポート圧力制御プラットフォームの提案,日本機械学会山梨講演会2025予稿集,p.38-39 (2025)
5) 間宮広明:磁性流体の物理と化学,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.93-95 (2025)
6) 西田均:磁気混合流体を応用した研磨における加工除去量特性−流体力学的特性を用いた除去深さ分布の予測−,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.96-100 (2025)
7) 山本久嗣:磁気混合流体を応用した円筒内面マイクロ加工技術,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.101-104 (2025)
8) 島田邦雄:ハイブリッド流体(HF)とその最前線,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.105-109 (2025)
9) 岩本悠宏:粒子分散系磁気機能性流体の基礎と応用,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.110-113 (2025)
10) 本澤政明:磁性流体の熱流動特性と流動場計測,フルードパワーシステム,Vol.56,No.3,p.114-117 (2025)
11) 松谷一矢,笠井翔,片山知季,矢吹純,林晋也,桑原拓也:水ベース磁性流体の駆動圧特性の解明とU字形加熱部を有する熱輸送装置への応用,2025年春季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.1-3 (2025)
12) 上野翔,桑原拓也:磁性流体プラズマアクチュエータの連続配置による放電効率の向上,2025年春季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.4-6 (2025)
13) 三田佑樹,井門康司,岩本悠宏,廣田泰丈:感温性磁性流体を用いた容器型熱輸送装置の熱流動特性,日本機械学会2025年度年次大会予稿集,J051p-15 (2025)
14) 寄木隆矢,豊原涼太,大橋俊朗:磁気ビーズ封入液滴を用いた磁場による細胞間力操作技術の開発,日本機械学会2025年度年次大会予稿集,J223-01 (2025)
15) Ling, X.,吉田和弘,金俊完:内蔵ECFマイクロポンプにより駆動遅延を軽減できる肺機能チップデバイスの提案,日本機械学会山梨講演会2025予稿集,p.40-42 (2025)
16) 原悠月,田中豊,枝村一弥,横田眞一:機能性流体を用いたマイクログリッパの試作と把持性能の検証,日本機械学会2025年度年次大会予稿集,J112p-06 (2025)
17) 陸一鳴,桜井康雄,枝村一弥:電界共役流体用メッシュ型ポンプの性能向上,日本機械学会2025年度年次大会予稿集,S111-13 (2025)
18) 肥後寛,許宗T,桜井康雄,田中和博:CFDを用いた噴射流の平板衝突現象解析,2025年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.61-63 (2025)
19) 江口淳,吉田和弘,金俊完:ジャミング変位拘束機構を用いた多自由度アクチュエータのプロトタイプ,2025年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.67-69 (2025)
20) Zhu, Y., De Volder, M., Yoshida, K., Kim, J.-w.: Pyrolyzed SU-8 needle electrodes for Electrohydrodynamic (EHD) micropumps, Abstract Book of ICMDT2025, p.58-59 (2025)
21) 山ア啓太,村田隼人,寺阪澄孝,下大川丈晴,長妻明美,安齊秀伸,三井和幸:EHDポンプを応用した蛇腹型力覚提示デバイスの開発に関する基礎的研究,2025年春季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.7-9 (2025)
22) 松島利宣,村田隼人,武井裕輔,寺阪澄孝,下大川丈晴,長妻明美,安齊秀伸,三井和幸:EHDポンプを駆動源とした多方向型EHD人工筋の基礎特性の評価,2025年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.70-72 (2025)
23) 山ア啓太,村田隼人,前田浩行,前田睦浩,寺阪澄孝,下大川丈晴,長妻明美,安齊秀伸,三井和幸:EHDポンプを駆動源とした新たな空気圧式フットポンプの開発に関する基礎的研究,2025年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集,p.73-75 (2025)
よしだ かずひろ
吉田 和弘 君
1989年東京工業大学大学院博士課程修了,同大学助手,助教授(准教授)を経て2015年4月教授.2008年10月〜2009年3月米国UCSB客員研究員,2015年7月〜9月米国MIT客員研究員.2024年10月大学統合により東京科学大学教授.機能性流体,パワーマイクロロボットの研究に従事.JFPS,JSME,IEEEなどの会員.工学博士.
E-mail: yoshida@pi.titech.ac.jp