解 説
2025年度学術論文賞を受賞して*
趙 菲菲**
* 2026年6月5日原稿受付
**岡山理科大学,〒700-0005岡山県岡山市北区理大町1-1
前述のように6脚移動ロボットは,人を乗せた状態で6方向への並進と時計回り半時計回りの回転と12方向への傾斜動作が可能である.しかし,ロボットは,VRゴーグルを装着した状態での使用を想定しており,座面の運動を与える際に必ずしも機器本体が設置場所から移動する必要がない.そこで、以下の仕様を満たすアクチュエータの開発をめざす.1) クッション性を与えるため垂直方向の圧縮性を有する.2)並進力、傾斜角,振動を与えることができる.3) 移動する必要はない.4) 使用者の安全のため柔軟である.これらの仕様に従ってアクチュエータの運動を予測する解析モデルを提案する。Fig.3とFig.4に提案するクッション型VCCAの解析モデルを示す.
提案アクチュエータは2枚の厚さ5 mmのアクリル円板,6本のEFPA,3本の圧縮コイルバネ(外径20 mm,長さ12 mm,ばね定数200 N/m)から構成される.6本のEFPAは,円板に対し半径20と65 mmの位置に設置角度が45度で交差するように放射状に配置され,3本のコイルバネは圧縮された状態で中心から半径65 mmの位置に60度毎にアクリル円板に固定されている.アクチュエータは圧縮バネにより垂直負荷を支えクッション性を与えることができる.また,以下の仮定を設けてFig.4に示す力平衡解析モデルを作成し,EFPAへの印加圧力とVCCAの並進や垂直変位の関係を予測することができた.なお,ここでは解析式の詳細は略す.
1) 上部プレートはx, y, z方向に移動するが回転や傾斜はしない.
2) 3本のEFPA間の干渉はないものとする.
解析結果に基づいて各EFPAへの印加圧力を与えた実験により,実機においても傾斜することなく並進動作が実現できることを確認した.
前述のVCCAはEFPAの無加圧状態での耐荷重能力が低いのでバネを増やすことにより高める改良を行った.前述の解析モデルを任意のバネ本数に適用できるよう拡張した.それを用いて計算した印加圧力とVCCA変位の関係をFig.5に示す.この結果から6本バネが適していると判断した.Fig.6に解析結果をもと実際に試作した改良型VCCAの外観を示す.Fig.7に,VCCAの2種類の曲げ動作パターンにおける加圧EFPAの配置を示す(図は3本バネであるが動作パターンは6本バネも同じである).ここで,上部プレート中心から40 mmの位置に取り付けられたEFPAを内,上部プレート中心から130 mmの位置に取り付けられたEFPAを外と定義する.Fig.7に示すように,曲げパターン1では2本の内側EFPAと1本の外側EFPAを加圧する.一方,曲げパターン2では1本の内側EFPAと2本の外側EFPAを加圧する.これらの加圧パターンにより,VCCAの上部プレートに曲げモーメントを発生させ,所望の方向への曲げ動作を実現する.
Fig.8に改良型VCCAの動作の過渡応答を示す.Fig.8の@,AおよびBは,それぞれVCCA内の2本,4本および6本のEFPAを加圧した際の動作の様子を示している.2本のEFPAに500 kPaを印加した場合,最大変位はΔx = 17 mm,Δy = 9.8 mmおよびΔz = 20.3 mmであった.また,4本のEFPAに500 kPaを印加した場合,最大変位はΔx = 22.2 mm,Δy = 12.8 mmおよびΔz = 29.5 mmであった.さらに,6本のEFPAを350 kPaで加圧した場合,計算による変位Δzは34 mm,実験による変位Δzは34.2 mmであった.両者はほぼ一致しており,提案した解析モデルの妥当性を確認することができた.
Fig.8のCおよびDは,それぞれ曲げパターン1および曲げパターン2における曲げ動作の様子を示している.パターン1およびパターン2では,500 kPa印加時にそれぞれ最大曲げ角度26.0°および26.8°が得られた.また,Eは74 Nの負荷を加えた状態での持ち上げ動作の様子を示している.@を見ると,高さをほとんど変えることなく並進動作が実現されていることが分かる.以上の結果より,60°間隔の6方向への曲げ動作および持ち上げ動作が実現可能であることを確認した.さらに,改良型VCCAは鉛直方向の圧縮性を有しながらも,6方向の並進動作,曲げ動作および持ち上げ動作を実現できることが明らかとなった.
1)Annual Report on the Ageing Society [Summary] FY2022, https://www8.cao.go.jp/kourei/english/annualreport/2022/pdf/2022.pdf, June 2022.
2)Sasaki, D., Noritsugu, T., Yamamoto, H., and Takaiwa, M.: Development of Power Assist Glove using Pneumatic Artificial Rubber Muscle. Journal of the Robotics Society of Japan, Vol. 24, No. 5, pp. 640-646 (2006)
3)Kobayashi, H., Shiban, T., and Ishida, Y.: Realization of all 7 motions for the upper limb by a muscle suit. Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 16, No. 5, pp. 504–512 (2004)
4)Council of Bureau of Social Welfare and Public Health Tokyo Metropolitan Government from, https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/sonota/riha_iryo/kyougi01/rehabiri24.files/siryou242.pdf; February 2013 (in Japanese).
5)Shimooka, S., Hane, Y., Akagi, T., Dohta, S., Kobayashi, W., Shinohara, T., and Matsui, Y.: Development and Attitude Control of Washable Portable Rehabilitation Device for Wrist without Position Sensor, JFPS International Journal of Fluid Power System, Vol.13, No.3, pp. 25-34 (2020)
6)Tian, W., Jhan, C., Inokuma, M., Akagi, T., Dohta, S., and Shimooka, S.: Development of a Tetrahedral-Shaped Soft Robot Arm as a Wrist Rehabilitation Device Using Extension Type Flexible Pneumatic Actuators, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol.32, No.5, pp. 931-938 (2020)
7)Hase, K., Akagi, T.,Dohta, S., Shinohara, T., Kobayashi, W., Shimooka, S., : Development of Six-Legged Mobile Robot Using Tetrahedral Shaped Pneumatic Soft Actuators, International journal of Fluid Power System, vol. 15 , No.1, pp. 33-39 (2022)
ちょう ふぇいふぇい
趙 菲菲
2011年岡山理科大学大学院システム科学専攻博士後期課程修了.国立高専機構津山工業高等専門学校助教,講師,准教授を経て, 2022年岡山理科大学情報理工学部准教授,介護支援ロボット,空圧機器の研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,日本機械学会などの会員.博士(工学)
E-mail: f-cho@ous.ac.jp



Fig.3 Analytical design model of proposed actuator Fig. 4 Analytical model considering force balance


Fig. 5 Relation between applied pressure and calculated Fig. 6 Appearance of the improved Vertical Compressible displacement ∆z Cushion-type Actuator (VCCA) using six springs


Fig. 7 Pressurized EFPAs in two patterns of bending Fig. 8 Transient views of various motions using the improved motion of the VCCA VCCA