解 説
2025年度技術開発賞受賞について*
浅井 篤**
* 2026年6月5日原稿受付
**SMC株式会社 〒277-0871 千葉県柏市若柴227-6-138-3 Bldg.B
この度は, 当社で開発したエアマネジメントシステムAMS20/30/40/60シリーズについて日本フルードパワー学会で高い評価をいただき,技術開発賞の受賞を賜りましたことを名誉に思うとともに,選出いただけたことに深く感謝を申し上げる.
当社では,多くの空気圧機器を使用する製造業において生産設備で消費されるエネルギーの内約20%が空気圧源となるコンプレッサー稼働での消費と試算している.このことは生産設備の消費エアを節約することがエネルギー消費抑制に直結することを意味している.
エア消費には設備のアクチュエータを稼働させるためのものと非稼働時のエア漏れがあり,本稿で紹介するエアマネジメントシステムAMS20/30/40/60シリーズは,設備の状態(稼働/非稼働)を自動判別し, 非稼働時のエア漏れを低減することで省エネを実現するものである.また,無線通信機能により一括集中管理を可能にするものである.
2.1 消費エア削減と安全性維持
設備が停止するとアクチュエータなどの動作が停止するため通常稼働時と比べて消費エアが減少する.この時エアマネジメントハブに搭載されている流量センサがこの流量減少を検出し,ある一定の閾値より流量が低下すると設備が停止したと見なす.且つスタンバイ信号が入力されているとスタンバイ電空レギュレータへ信号を出力し,設備への供給圧力を下げるように動作する.
どの程度まで圧力を下げるのかについては設備使用者が決定するものである,例えば,シリンダが自重で落下動作をしない程度,必要最小限のエアブロー量を維持する圧力など,安全性,品質面を検討して決めれば良い.このように圧力を下げることで老朽化に伴うエア漏れ,ブローエア量が減少し,コンプレッサーの負荷軽減につながるのである.
察しの良い方はお気づきかと思うが,設備を停止してもエア供給を維持している設備で効果を発揮する.生産ラインのタクトバランスをとるために待機時間がある設備,休憩時間中に待機状態となる設備,夜間に一部の生産ラインだけ稼働して他の生産ラインが待機状態となる設備などである.
当社の簡易的実験では,通常稼働状態の圧力0.7MPaでエア消費が200L/minのとき,圧力を0.2MPaまで下げるとエア消費が76L/minになり,削減率が62%である.0.5MPaで200L/minのとき,圧力を0.2MPaまで下げると84L/minになり削減率は58%である.圧力を下げるとエア消費量が減るが,この時間が長いと結局は無駄な消費をしていることに変わりは無い,そこで,ある一定時間経過したら設備へのエア供給を遮断且つ設備側の残圧を排気することも可能である.意図的に排気する目的も明確で,遮断だけで排気しない状態は漏れによって時間経過とともに圧力が低下する,上述のアクチュエータ自重落下の要因となるのである.このような危険因子を取り除くため排気動作を設備設計者の意図的なものとし設備を初期状態に戻すことである.この結果,設備稼働再開するまでの時間も短縮化することも可能となる.
特に大規模な工場においては,エア漏れ時の“しゅー”という音が周囲の音でかき消されてしまいエア漏れ箇所の特定が困難である,そもそも大量の設備を全て個別にチェックする人的工数を掛けられない,補修もできない,経時的に漏れ量が増加する,トータル的に無視できない漏れ量となっていることがある.こんな時にエアマネジメントシステムAMS20/30/40/60シリーズを各設備に導入することで,省エネと危険因子除去の両立が可能となる.
2.2 遠隔監視と無線通信機能
無線接続は,親局となるベース1台に対してリモート(子局)を最大10台,最大通信距離100mまで対応可能.通信を開通するための配線工事が親局だけで済むため,導入時に有線接続と比べて大幅な工数削減が図れる.また,当社独自のプロトコルを採用し,暗号化による高セキュリティ化,不正アクセス防止,他の無線機器が使用していない周波数チャンネルを選択する機能による通信追突を軽減し,通信品質の安定化を図っている.
ISO14001が浸透するにつれて空気は無尽蔵で無料という考えは廃れてきた,異常気象による環境影響も大きな関心事となり,省エネ活動,環境対応は近年の世界的トレンドである.
状態の監視,予防保全などによるトラブル回避も重要な活動の一つで,各種センサの役割も大きくなってきている.
このように市場からの期待に応えるべく,環境に配慮した製品設計,設備設計,行動は企業価値を高めるものである.今まで以上にその成果を実感できる製品開発に取り組み貢献したく思う.
あさい あつし
浅井 篤 君
1990年 日本大学理工学部電気工学科卒業 同年SMC株式会社入社 技術部開発5部に所属し圧力センサ,流量センサの開発に携わり現在に至る.
日本フルードパワーシステム学会正会員

図1.エアマネジメントシステム 構成部品

図2.消費エアの削減 タイムチャート

図3.無線通信システム構成イメージ