解 説
2025年度油空圧機器技術振興財団顕彰を受賞して*
佐々木 大輔**,原田 魁星***
* 2026年6月5日原稿受付
**香川大学,〒761-0396香川県高松市林町2217−20
***香川大学大学院(当時),〒761-0396香川県高松市林町2217−20
2.1 研究の目的
労働者の高齢化や労働人口の減少により,ウェアラブル型パワーアシスト装置が注目されており,出力重量比が高く柔軟である空気圧アクチュエータは様々なウェアラブル型パワーアシスト装置に用いられている.空気圧アクチュエータの駆動には,コンプレッサやタンク等の空気圧供給システムが必須であり,これらには携帯性や省エネルギー性が求められる.
携帯性に優れる空気圧供給システムを構築するため,筆者らは圧縮空気を蓄積するタンクとしてゴム材料を用いた容積可変タンクを開発した2).開発した容積可変タンクは,圧縮空気の流入時のタンクの膨脹により流入するエネルギーの一部を弾性エネルギーとして蓄積することで,圧縮空気流入,出時の圧力変動を抑制可能である.容積可変タンクの圧力変動抑制効果は,コンプレッサの高出力,高効率圧力帯でコンプレッサを駆動可能とし,コンプレッサの小型化と消費電力の低減に大きく寄与する.
さらに,容積可変タンクを小型化するため,ゴム材料を中空円筒形状に成形した容積可変タンクを開発した3).しかし,容積可変タンクを用いてシステムの消費エネルギーを低減させるためには,駆動対象およびコンプレッサの特性に応じて適切なエネルギー蓄積特性を実現しなければならない.そこで本論文では,中空円筒形状容積可変タンクのエネルギー特性モデル化手法を提案している.
2.2 中空円筒形状容積可変タンクの概要
容積可変タンクは,高圧の圧縮空気を蓄積するにはタンク肉厚が増加することが課題であった.そこで,初期の内部容積を削減した形状である中空円筒形状容積可変タンク(図1)を開発した3).中空円筒形状容積可変タンクと空圧機器に一般に使用される容積が一定のタンク(以降 容積固定タンク)を内部に蓄積するエネルギーにより比較すると,中空円筒形状容積可変タンクは小型でありながら,アクチュエータの駆動など下流側に放出可能なエネルギーが多い.また,容積可変タンクの周辺圧を増加させると同程度の膨張量においても高い圧力を蓄積可能となる.そこで,図2のように中空円筒形状容積可変タンクを複数枚積層した積層型容積可変タンクを開発した.積層型容積可変タンクは,各層に圧縮空気を充填することで,肉厚の増加による重量の増加を防ぎつつ想定した高圧の圧縮空気の蓄積が可能なことを確認している3).
2.3 中空円筒形状容積可変タンクの変形モデルの概略
中空円筒形状容積可変タンクは,低圧時には高さ方向にのみ膨張する.そこで,タンクの上下面の円盤部分を皿ばねとみなし,膨張変形を皿ばねの荷重とひずみの関係式4)を用いモデル化する.
圧力が増加すると,高さ方向に加え半径方向にも膨張し内部容積が急増する.内部容積の急増により,エネルギーの一部を弾性エネルギーとして蓄えることで圧力変動の抑制(以降 圧力緩和特性)が生じる.圧力の増加により高さ,半径両方向に膨張する状態の変形を球殻の膨張とみなし,Mooney-Rivlin のひずみエネルギー関数5)に基づき筆者らがこれまでに提案した球殻形状の容積可変タンク内部モデル6), 7)を用い,この球殻が大気圧から膨張するときの空気圧エネルギー特性を得る.
本モデルに基づき製作した2種類の寸法のタンクのエネルギー特性の測定結果とモデルの計算結果を図3,4に示す.どの寸法のタンクも,流入時に圧力緩和特性が生じる圧力範囲は計算結果とほぼ一致している.以上の結果より,所望の圧力範囲で圧力緩和特性を発生可能な中空円筒形状容積可変タンクの設計時において本モデルの活用が有効であることを確認した.
2.4 積層型容積可変タンクへの変形モデルの適用
積層型容積可変タンクは中空円筒形状の内側タンクを外側のタンクで覆う構造であり,内側タンク単体で蓄積可能な圧力と,外側タンク単体で蓄積可能な圧力の合計が積層型容積可変タンクとして蓄積可能な最大圧力となる.内,外側タンクを組み合わせた場合に130kPa近傍で圧力緩和特性が生じるよう,内,外側タンクがそれぞれ80,50kPa近傍で圧力緩和特性を生じるよう上記モデルに基づき製作し空気圧エネルギー特性の測定を行った.
図5に積層型容積可変タンクの特性と内側タンク単体の特性との比較を示す.積層型容積可変タンクは,130kPa付近で圧力緩和特性が生じている.また,積層により外側タンクの圧力を上昇させることで内側タンクの圧力緩和特性が生じる圧力範囲が上昇し,より多くのエネルギーを蓄積できることを確認できた.
実験時の内,外側タンクの圧力を測定した結果を図6に示す.内側タンクの膨張により外側タンク内の空気が内側タンクにより圧縮されるが,外側タンクの圧力緩和特性により外側タンク内の圧力変動が緩和されていると言える.以上の結果から,積層型容積可変タンクの効果とモデルの有効性を確認した.
1) 原田,佐々木,門脇,八瀬:中空円筒形状容積可変タンクの変形モデルの構築,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol. 55,No. 1,pp. 1-8 (2024)
2) T. Iwawaki, D. Sasaki, T. Noritsugu, M. Takaiwa: Development of Portable Energy-Saving Type Air Supply System –1st Report Effect of Variable Volume Tank –, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol.24, No.3, pp.464-471 (2012)
3) K. Harada, D. Sasaki, H. Yase, J. Kadowaki: Development of Air Supply System for Wearable Robot-Effectiveness of Hollow Cylindrical-shaped Variable Volume Tank, Journal of Kagawa University International Office, Vol.14, pp.247-252 (2022)
4) J. O. Almen, A. Laszlo: The Uniform-Section Disk Spring, Trans. ASME, Vol.58, pp.305-314 (1936)
5) J.G.ウィリアムズ著,国尾,清水,隆 共訳:高分子固体の応力解析とその応用,培風館,pp.179-193 (1978)
6) 門脇,佐々木,萱原:ウェアラブルロボット用空気圧供給システムに用いる容積可変タンクのモデル化,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.51,No.1,pp.9-15 (2020)
7) 八瀬,佐々木,門脇,馬塲:ゴムの物性を考慮した McKibben 型空気圧ゴム人工筋のモデル化,日本機械学会論文集,Vol.88,No.905,p.21-00286 (2022)
8) 佐々木,原田,門脇,八瀬:積層型容積可変タンクを用いた回生機能を有する空気圧供給システム,2025年春季フルードパワーシステム講演会講演論文集,pp.91-93 (2025)
ささき だいすけ
佐々木大輔君
2003年岡山大学大学院博士後期課程中退後同大学 助手,助教を経て,2015年香川大学講師,2016年同准教授,2021年同教授,現在に至る.空気圧ソフトアクチュエータを使ったウェアラブルロボットの研究に従事.日本フルードパワーシステム学会,IEEE,日本機械学会,日本ロボット学会などの会員.博士(工学).
E-mail: sasaki.daisuke@kagawa-u.ac.jp
はらだ かいせい
原田 魁星君
2025年香川大学大学院博士後期課程修了後,同年ミネベアミツミ株式会社入社,現在に至る.入社後はボールベアリングの開発に従事.博士(工学).
E-mail: kharada.ns@minebeamitsumi.com


