解 説
名誉員を拝命して*
眞田 一志**
* 2026年 月 日原稿受付
**横浜国立大学総合学術高等研究院,〒240-8501神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台79-5
帰国後,学位論文に取り組んだ.学位論文では,油圧系の不確かさを考慮したロバスト制御系の設計方法に関するものであった5)〜8).油圧制御系の非線形性などの誤差要因を,パラメータ変動と高次動特性に分類したうえで定量的に評価し,これらの要因をH∞制御理論やμシンセシスに適用する方法に取り組んだ.
その後,横浜国立大学工学部に,山口教授の助教授として採用していただいた.機械製図や力学,機構学,二部の講義などいろいろな講義を担当させていただいた.専門となる大学院の講義「システムモデリングと制御」では,学位論文の内容を中心として機械系のロバスト制御に関する講義を担当させていただいた.
結局,約28年にわたって横浜国立大学で,教育研究を担当させていただいた.多くの優秀な学生と出会い,さまざまな研究に取り組むことができた.代表例として,研究指導した博士論文を紹介する.管路における波動伝播速度の推定9),大型商用車用油圧パワーステアリング10),EPS用モータのステータコア構造と巻線工法11),絞り制御弁内蔵型空気ばねを用いた鉄道車両の車体上下振動低減12),仮想ばね特性をもつパワーアシスト椅子13),同期規制方式による角線の密着巻線14),管路動特性の最適化有限要素モデルを用いたカルマンフィルタ15),アキュムレータの窒素ガスの状態変化16),デジタル油圧の建設機械向けパイロット元圧回路への応用に関する研究17)18).
横浜国立大学では,宮嵜先生,志垣先生が助教として参加してくださり,一緒に教育研究に取り組む幸運に恵まれた.宮嵜先生とは,投球ロボットのボール遠投性能を向上させる運動と身体の統合設計をはじめとするロボット工学とフルードパワーの融合に関する研究に取り組んだ19)〜21).志垣先生とは,Bio-Inspired Roboticsに関する先進的な研究に取り組んだ22).
さらに,油圧回路のインピーダンスの計測方法に関する実験的な研究を行った23).一方で,障がい者の体調の計測・予測に関する共同研究を実施した24).
日本フルードパワーシステム学会では,会長を務めさせていただき,学会創立50周年記念事業の準備を担当させていただいた.各種事業では先生方と事務局のご協力を得ることができ,コロナ禍にもかかわらず順調に準備を進めることができた.誌上をお借りして,ご協力いただいた皆様に感謝申し上げる.
著者は,2026年3月末をもって横浜国立大学を定年退職した.現在は,横浜国立大学総合学術高等研究院に特任教員(教授)として所属し,短期間ではあるが油圧の研究を継続できる機会を頂戴した.皆様の益々のご発展を祈念して,筆をおくこととする.
1) 趙 彤,真田一志,北川能,竹中俊夫,管路内の停留空洞が過渡流量変動に及ぼす影響,日本機械学会論文集(B編),Vol.50,No.460,p.3116/3123 (1984)
2) 真田一志,北川能,竹中俊夫,水圧管路における液柱分離の類型化による解析手法の検討,日本機械学会論文集(B編),Vol.56,No.523,p.585/593 (1990)
3) K Sanada,C W Richards,D K Longmore and D N Johnston,A finite element model of hydraulic pipelines using an optimized interlacing grid system,Proc Instn Mech Engrs,PartT: Journal of Systems and Control Engineering,Vol.207,p.213/222 (1993), https://doi.org/10.1243/PIME_PROC_1993_207_344_02
4) 真田一志,北川能,最適化交互格子系を用いた管路動特性の有限要素モデル,日本機械学会論文集(C編),Vol.60,No.578,p.3314/3321 (1994)
5) 真田一志,北川能,管路動特性を考慮した閉ループ圧力制御系のロバスト制御,日本機械学会論文集(C編),Vol.61,No.589,p.3559/3566 (1995)
6) 真田一志,無敵幸二,北川能,μシンセシスによる電気油圧サーボ機構の制御系設計手法の研究,日本機械学会論文集(C編),Vol.61,No.590,p.3960/3967 (1995)
7) 真田一志,北川能,油圧系のモデル化誤差を考慮した自動変速機における回転数の2自由度制御の研究,計測自動制御学会論文集,Vol.32,No.1,p.106/113 (1996)
9) 王盛,真田一志,管路における波動伝ぱ速度の推定に関する研究,日本油空圧学会論文集,Vol.32,No.3,pp.65/70 (2001)
10) 高炳サ,眞田一志,降幡健一,大型商用車用油圧パワーステアリングのモデリングに関する研究,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.39,No.2,p.19/27 (2008)
11) 石上孝,北村正司,眞田一志,EPS用モータのステータコア構造と巻線工法の考察,電気学会D部門誌,Vol.128,No.12,p.1411/1417 (2008)
12) 風戸昭人、菅原能生、小金井玲子、眞田一志,絞り制御弁内蔵型空気ばねを用いた鉄道車両の車体上下振動低減,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.40,No.6,p.103/110 (2009)
13) 秋山悠基、眞田一志,動作感応形パワーアシスト椅子に関する研究,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.41,No.6,p.107/114 (2010)
14) 小澤明、眞田一志,管路動特性の最適化有限要素モデルを用いたカルマンフィルタに関する研究,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.42,No.5,p.9/14 (2011)
15) Shuce ZHANG, Hiromu IWASHITA, Kazushi SANADA, Soave-Redlich-Kwong Adiabatic Equation for Gas-loaded Accumulator, 日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.49,No.3,p.65-71 (2018) DOI: https://doi.org/10.5739/jfps.49.65
16) 名倉忍,柳田悠太,眞田一志,デジタル油圧の建設機械向けパイロット元圧回路への応用に関する研究,日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.54,No.1,p.10-17 (2023) https://doi.org/10.5739/jfps.54.10
17) 名倉忍,柳田悠太,眞田一志,デジタル油圧の建設機械向けパイロット元圧回路への応用に関する研究(第2報 高圧用回転弁の実験による検証),日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.56,No.1,p.1-11 (2024) https://doi.org/10.5739/jfps.56.1
18) 宮嵜哲郎,兼清暁大,土山豊,眞田一志,投球ロボットのボール遠投性能を向上させる運動と身体の統合設計,日本機械学会論文集,Vol. 82,No. 833 (2016),DOI: 10.1299/transjsme.15-00342
19) 宮嵜哲郎,飯島拓也,鈴木裕二,眞田一志,作業者の身体負荷を軽減する荷重支持アームの設計と支持力制御,日本機械学会論文集,Vol. 82,No. 842,p. 16-00216 (2016),DOI: 10.1299/transjsme.16-00216
20) 宮嵜哲郎, 飯島拓也, 平原雄一, 眞田 一志,作業者の身体負荷を軽減する荷重支持アームの開発と装着時支持性能の評価,日本機械学会論文集,Vol. 83,No.849,(2017),DOI: 10.1299/transjsme.16-00544
21) Tetsuro MIYAZAKI, Kazushi SANADA, Experimental validation of an optimum design method for a ball throwing robot considering degrees of freedom, link parameters, and motion pattern, Mechanical Engineering Journal, Dynamics & Control, Robotics & Mechatronics, Volume 4,Issue 5 Pages 17-00147 (2017), https://doi.org/10.1299/mej.17-00147
23) 橋本大樹,藤田昌孝,眞田一志,油圧インピーダンス計測技術に関する研究(自動変速機バルブボックス油圧回路の動特性計測),日本フルードパワーシステム学会論文集,Vol.54,No.2,p.19/26 (2023),https://doi.org/10.5739/jfps.54.19
24) Atsushi Takashima, Yuichi Eguchi, Kazushi SANADA, Daisuke Kurabayashi, Satoshi Shirogane, Shoichi Masaki, Toru Ogata, Proposal of a Marker-less Registration Method for Measuring Changes in Daily Swelling of the Foot of Individuals with Spinal Cord Injury Using a Handheld 3D Scanner, Conference: 2025 47th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society (EMBC),(2025)
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さなだ かずし 眞田 一志 君 1986年東京工業大学助手.1998年横浜国立大学工学部助教授.2004年同教授.2019〜2024年同理工学部長.2026年同総合学術高等研究院特任教員(教授).2018〜2021年日本フルードパワーシステム学会会長.博士(工学). E-mail: sanada-kazushi-sn@ynu.ac.jp
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